――ドライバーの何%がそうした知識を持っていれば大丈夫ですか?

西成教授:長さが3km以下の渋滞であれば、10人中1人が知っていれば大丈夫です。それによって、渋滞が分断化され、ほどけやすくなります。渋滞は大きなかたまりになってしまうと解くのが難しくなってしまいますが、渋滞に空間が持ち込まれ、分断化されることで、渋滞は弱まるのです。

――10人に1人という割合はどうやって算出されたのでしょうか。

西成教授:コンピュータシミュレーションによって算出しました。渋滞の波がいきなり弱まり、後ろの渋滞の成長率が大幅に低下することが明らかになったのです。

「人間大好き。生き生きと人間らしい生活が送れる社会にしたい」(西成教授)

――そういえば、クルマ1台1台にIPアドレスなどを割り振るという話もありますが、そうした管理によって渋滞をコントロールするというのはいかがですか。

西成教授:いきなり、カーナビのモニター画面に「あなたのクルマは、直ちに隣の車線を走りなさい」なんて出たらイヤじゃないですか。今、どこで何をやっているかがすべて分かってしまうようなITによる管理社会は避けたいですね。繰り返しになりますが、もっと生き生きと人間らしい生活が送れる社会にしたいです。

 例えば、天気予報のように、高速道路の電光掲示板に「渋滞確率80%」といった具合に出すのも面白いのではないかと思います。現在は渋滞情報を出していますが、渋滞を予測して渋滞警報を出すのです。それを見たドライバーが速度を落として車間距離を空けてくれることで、渋滞確率が下がれば、ドライバーもうれしいと思うんですよ。電光掲示板に「皆さんのお陰で渋滞確率が減りました! グッジョブ!」みたいな感じで表示してほめてあげれば、ゆっくり走ることで損した気持ちになるどころか、「社会に貢献したぞ!」という気持ちになってますますやる気が起きるでしょう。

――現在、エコドライブをするとエコマークが点灯するクルマがありますが、あれはなかなかいいアイデアだと思いました。人間というのは面白いもので、エコマークを光らせたいと思ったりするんですよね。ところで、事故渋滞に対しては良い方法はないのでしょうか。

西成教授:いったん、事故が起こってしまうと難しいですが、高速道路で起こる事故の約2割は渋滞に気付かず前のクルマに追突するケースです。ですので、車間距離を空けてゆっくり近づくことで、渋滞の原因となる事故自体が減ります。渋滞は色々な要因がからみ合って起こっていますから、1つを解決することで色々な波及効果が出てくるのです。