――西成先生が提唱されている運転方法は、渋滞の回避と解消を同時に行うことができるものなのですね。
西成教授:2008年8月16日に小仏トンネル付近で実証実験を行ってみたところ、3、4台のクルマが連携するだけで渋滞が発生しないことも分かりました。ところが、実験中に私の前にクルマが2台割り込んでしまったのです。それによって、あっと言う間に渋滞ができてしまいました。もしそれがなければ、2008年8月16日の午前11時からの渋滞は発生していなかったはずです。その証拠となるデータも持っているので、そのうち公開する予定です。
少なくとも1km以下の渋滞であれば、3、4台が連携することで、間違いなく渋滞の発生を抑えることができますよ。ですから、友達同士など数台のクルマを連ねて旅行に行かれる場合などは、“渋滞吸収隊”を作っていただき、ぜひ渋滞を取り去っていただきたいですね。渋滞情報は1kmから出ますので、相模湖インターチェンジで小仏トンネル付近に関する渋滞情報が出ていれば、もうガッツポーズですよ(笑)。
渋滞領域の手前5kmあたりから、時速70kmでゆっくり走ることで、渋滞は大分解消されます。早く行こうとすることが、逆に渋滞を成長させてしまうのです。「いかに渋滞を弱めるか」ということを考えていただければと思います。スローイン&ファーストアウトによって、渋滞の長さはどんどん短くなっていきます。
例えば、首都高速は時間帯によって料金が変わりますよね。夜中の12時になると、通常700円が400円になったりします。そうすると、夜中の12時の少し前になると、首都高に入るクルマは12時を過ぎ、料金が安くなるのを待つためゆっくり走り始めます。まさにそれです! これを皆でやれば渋滞はなくなります。私はこの現象を発見した時、「皆、できるじゃないか。ぜひ、小仏トンネルでもこれをやってくれ!」と思いましたね。
――では、渋滞の発生に合わせて通行料金を変えるというのはいかがでしょう?
西成教授:「現在、渋滞が発生しましたので、相模湖インターチェンジから小仏トンネルまでの区間の料金が3000円になりました」とか、ね(笑)。とはいえ、私はやはりお金で人間の行動をコントロールするよりも、皆さんの知識の向上に努めたいですね。
――ところで、ブレーキを踏まないことはエコドライブにもつながりますよね。
西成教授:おっしゃる通りです。エコドライブの基本はできる限りブレーキを踏まないことです。ブレーキを踏むということは、すなわち「スピードを出し過ぎた」ということです。ブレーキを踏まずに最後まで行けることが理想です。
よく都市交通で、前方に見える信号機が赤だと、緑に変わるのを見計らいながら、少しずつゆっくり近づくということがあると思いますが、渋滞への近づき方はその感覚と全く同じです。「赤から青になるのを待って、信号機にゆっくり近づく」という行為を、高速道路では、少し大きなスケールでやっていると思えば良いのです。目の前に渋滞があればゆっくりと近づくこと。そのうちに渋滞は解けてくれので、自分は渋滞に巻き込まれることなくノンストップで走ることができます。
――では、一旦渋滞にはまってしまった場合、最適な車間距離というのはあるのでしょうか?
西成教授:高速道路での渋滞の場合、時速20kmが平均的な値です。ですので、車間距離は中心間距離で15mが良いでしょう。15mと言うと2、3台入れる距離ですが、15m以下に詰めてしまうと危険です。
そしてその際も、割り込まれても決して焦らず、じっと耐えることが重要です。「燃費が悪いな、かわいそうだな」と思っておけばいいのです。「そのうち、世の中は変わる」と信じること。信じるには勇気が必要ですが、勇気は大切です。知識は勇気につながります。そのためには、私を信じていただくことです(笑)。