渋滞が解消されていく速さは時速−20km

「現在渋滞が発生している領域に、ちょうど渋滞が解消された頃に到達できるかを算出することができる」(西成教授)

西成教授:「ちょっと知るだけで、渋滞が解消される」ということはたくさんあります。例えば、NEXCOが「現在、長さ何kmの渋滞がこの場所にある」といった情報を発信していますが、その情報をリアルタイムに入手できれば、高速道路の各地点において、時速何kmで走れば良いかを計算によって割り出すことができます。

 高速道路において渋滞の先頭が後退していく速さは、平均的に見て時速約マイナス20kmだということが分かっています。つまり、時速マイナス20kmで渋滞は小さくなっていくということです。ですから、渋滞領域へ到達するクルマの台数がゼロ台であれば、1kmの長さの渋滞は3分でなくなる計算になります。渋滞領域に到達するクルマの台数と、渋滞から抜け出すクルマの台数を計算して、今の自分の位置から時速何kmで走れば、現在渋滞が発生している領域に、ちょうど渋滞が解消された頃に到達できるかを算出することができるというわけです。言い換えれば、何分後に現在の渋滞領域に着くようにすればよいかということです。現在、そういったシステムの導入を提案しています。

 そういったシステムができれば、渋滞の起こっている場所の後ろの方のある場所で、例えば「この地点では制限時速を75kmにしなさい」と警告することができます。しかもその警告を守った方がノンストップで渋滞領域に到達でき、しかもその頃には渋滞は解消されているわけですから、警告を守らないクルマより得をすることになります。こういった計算を運転中にその都度行うのは非常に難しいので、システムとして提供できれば良いなと思っているんです。

――ぜひ、作っていただき社会に普及させていただきたいですね。

西成教授:例えば小仏の場合、渋滞の長さが2kmくらいであれば、相模湖インターチェンジから時速70kmで走行していけば、渋滞に巻き込まれることなくノンストップで小仏トンネルを通過できます。でも、時速100kmのまま行ってしまうと、小仏トンネルあたりで時速10kmに下がってしまいます。「どちらが良いですか?」と言う話です。

 ちょっと我慢するだけで、全くブレーキを踏まずに、そのまま行くことができるのです。そういったシステムを提供するためのコストは、計算するためのソフトウエアくらいのもので、インフラ整備に対するコストはほとんどかかりません。しかも計算と言っても簡単な計算です。こういった渋滞状況に応じて可変的に速度制限を行うことを、「VSL」すなわち「バリアブル・スピード・リミッター」と呼んでいて、海外では一部、導入しているところもありますが、我々の研究によってより精度が向上してきています。