――では、西成先生が提唱されている「渋滞を起こさない運転方法」について教えて下さい。
西成教授:まず、車間距離を十分空けることです。高速道路の場合、車間距離40mが大きな分岐点になります。これを40m以下に詰めてしまうと、前のクルマがブレーキを踏んだとき、自分のクルマもブレーキを踏まざるを得ないということが実験結果などから分かっています。でも、40m以上空いていれば、前のクルマがブレーキを踏んでも自分のクルマはより強くブレーキを踏むということがないのです。つまり、後続車に対して「ブレーキを踏む」という連鎖が強まるか、弱まるかの境目が車間距離40mなのです。言い換えれば、40m以上空けていれば、後続車にブレーキが弱まって伝わるため、渋滞は発生しないということになります。
今、高速道路の脇に、車間距離「40m」「80m」といった標識が立っていますが、あれが渋滞解消の非常に良い目安になります。追突事故防止のためのものですが、私からすれば渋滞対策です。
とはいえ、前との車間が空いているとつい詰めてしまうというのが人情です。目の前にケーキがあるとつい食べてしまう――。ダイエットと全く一緒です。しかしながら、「短期的な視野で行動すると人は損をする」ということを肝に銘じていただきたい。そうすれば、渋滞を解消することもダイエットを成功させることも可能です。
統計データによれば、車間距離40mの時の平均速度は時速72kmですので、「高速道路では40m以上詰めると損をする」あるいは「時速約70km、車間距離40mが渋滞の始まり」と覚えておいていただければいいでしょう。
――時速70km、車間距離40mですか。
西成教授:この状況は、一見、渋滞とは縁遠い風景です。しかし、まずはこの状況を「渋滞の始まり」「渋滞警報」と認識していただくことが重要です。
高速道路で時速70kmというのは「ちょっと遅くてイライラする」といった感覚を持たれる速度だと思います。しかしこの状況に陥ったら直ちに“治療”を施してしていただかないと、あっと言う間に深刻な渋滞に陥ってしまいます。
――渋滞に“治療”なんてできるのですか。
はい。渋滞の治療とは、車間距離を40m以上空けるように努めるということです。「車間距離という“貯金”を渋滞の中に持ち込むことによって、渋滞が弱まる」というイメージです。そうしないと、1分以内に時速60km、50kmとあっという間に減速していき、渋滞に陥ってしまいます。
仮に車間距離を空けることで後続の車に追い抜かれたとしても、グッと我慢することです。たったこれだけのことで、渋滞はウソのように解消されます。