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【社会】

子どもの転落 ご用心 都内住宅 3年で162人

2009年5月3日 朝刊

 東京都内の住宅の窓やベランダなどから誤って転落し、救急搬送された十二歳以下の子どもが、昨年までの三年間に百六十二人に上ることが、東京消防庁のまとめで分かった。転落事故の続発について、高層住宅に暮らす家庭の増加に伴う「高所平気症」を指摘する専門家もいる。

 東京消防庁管内(東久留米、稲城両市と離島を除く)で二〇〇六−〇八年、十二歳以下の子どもで転落事故に遭い、入院するほどの負傷をしたのは、搬送者全体の六割を超す九十九人。うち六人が重篤状態になり、少なくとも一人が死亡した。

 年齢別では、歩行を始めて行動範囲を広げる一−三歳児が、全体の半分弱の七十五人を占めた。転落場所は窓が最多で、ベランダ、通路・階段、屋上の順だった。

 今年起きた二件の転落死亡事故では、三月二十一日、江戸川区のマンション屋上で遊んでいた女児(11)と、四月七日に立川市の警視庁官舎六階の自宅ベランダにいた女児(3つ)が犠牲になった。

 警視庁によると、立川の事故では、女児がベランダにあったペットボトルのゴミなどを踏み台にして、高さ一・二七メートルの柵を乗り越えた可能性が高い。

 「子どもの成長に伴って、安全対策を見直す必要がある」と指摘するのは、作家の山之口洋さん(49)。七年前、千葉県内の自宅で当時三歳の長男が三階の窓から外に転落する事故を経験した。

 長男は隣のアパートの出窓がクッションになって軽傷で済んだが、「安全対策で階段には柵を設けていたが、窓には取り付けていなかった」と反省したという。

 「こども環境学会」副会長で、東大大学院の織田正昭教官(発達医科学)は、子どもが高層の建物で育つと、高さの感覚が鈍る「高所平気症」に陥りやすいと分析している。

 織田教官は「幼い時から高い場所にいると、下をのぞいても恐怖感を抱かなくなる」と指摘。「子どもの安全感覚を育てるため、普段からブランコや滑り台で遊ばせ、高さを実感させてほしい」と話している。

 

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