【仕事人】（１９）「サラリーマンＮＥＯ」ディレクター・吉田照幸さん（３９）　ＮＨＫにない番組を作りたかった (2/3ページ)

　一度は広島放送局へ異動し、報道やドキュメンタリーを担当したが、帰京後は再び芸能番組の「歌謡コンサート」を受け持った。スタイルが決まった定番番組ゆえに自由な演出は許されず、１年もたつとストレスがたまった。

　「もっと新しい発想で番組を作りたい」。本来の仕事を担当する傍ら、のど自慢をめぐる人間模様を描いた海外ドキュメンタリーなどの企画を出し続けた。上司から「本分を忘れるな」と言われたこともあったが平成１４年、ようやく新設されたばかりの番組開発プロジェクトに抜擢（ばってき）された。

　与えられた課題は「若い世代に見てもらえる番組」。決められた仕事を持たず、企画が通らなければすることがないという環境下で、入局以来、初めて追いつめられた。

　アイデアを求めて友人にＮＨＫに足りないものを尋ねると、「笑い」と返ってきた。折しも銀行の経営不安がうわさされ、サラリーマンの元気がなくなっていた。「サラリーマンを主人公にした大人のコメディー」。ぼんやりと構想が浮かんだ。

　本屋で買った映画学校の教本を読み込み、カメラワークは大河ドラマの担当者から資料をもらって学んだ。肝心のネタは、スタッフ自身が組織の中で悲哀を感じたエピソードを出し合い、街行く人からもヒントを集めた。ある日、ビルの廊下で何十分も立ったまま待たされている営業マンらしき男性がいた。これもネタにした。