憲法記念日のたびに様々な角度から日本国憲法を考えてきた。ことしは現在の国際社会での日本の立場と憲法の関係に焦点を当てる。集団的自衛権をめぐる憲法解釈を見直し、そのうえで自衛隊の国際協力活動を包括的に規定した一般法の制定が要る。そんな結論になる。
ソマリア沖の海賊を取り締まるために、いま海上自衛隊の艦船が活動をしている。自衛隊法82条にある海上警備行動命令が根拠だが、国会で審議中の海賊対処法案は、より強い権限を与える。海賊法案は過去の類似の法律と違うのは、時限法ではなく、一般法である点だ。
警察活動とされ、集団的自衛権をめぐる議論にはなっていない点も違いだ。インド洋での自衛隊の活動を認める補給支援法をめぐり、民主党は憲法違反として反対した。海賊法案ではそれを主張しない。
私たちは2001年の米同時テロの後、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈を見直し、多国籍軍後方支援法の制定を求めた。今日風にいえば、海賊法を包み込む形で、自衛隊の国際活動を包括的に定めた一般法である。国連平和維持活動(PKO)参加の根拠となっている国際平和協力法も吸収する。
それがない現状はどうか。PKOなど国連ミッションに参加する自衛官は39人。世界で80位だ。「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」とする憲法を持ち、安保理の常任理事国を目指す国とは思えぬ数字である。安倍政権が検討し、福田政権が無視した集団的自衛権をめぐる解釈見直しは当然だろう。
「ひとを守ってこそ、おのれを守れる。いくさとはそういうものだ」――。映画「七人の侍」で志村喬が演じる侍が農民にこう語る。個別自衛と集団自衛との間に線を引きにくい現実を語ったように聞こえる。ただし日本は「いくさ」に行くわけではない。
現在ある非現実的な制約を除去すれば、国際社会の安定のために日本が能力の範囲内で活動できる場は広がる。39人、80位という主要国のなかで最低の数字は、経済力では世界で2位を自負する国にとってはあまりに不釣り合いであり、返上を急ぎたい。
秋までには衆院選挙がある。その結果、次の政権が決まる。憲法にせよ、安全保障にせよ、最も重要な国政上の論点である。各党とも考えを有権者に説明してほしい。それを聞く側は、62年前のきょう施行された憲法を当時ではなく、今日の視点で読み返してみよう。