国土交通省は高速道路の整備計画を10年ぶりに追加した。必要な道路は確かにあるが、効果があいまいな事業も含む玉石混交の内容だ。
日本の高速道路の総延長は4月時点で7641キロに上る。建設中も合わせた9342キロが整備計画を策定済みだ。小泉純一郎元首相が整備計画路線以外は「白紙」と表明し、新計画は止まっていた。
今回、国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)で新たに整備計画を決めたのは四路線71キロ。都心から15キロ圏を結ぶ東京外郭環状道路の都内区間が柱だ。関越自動車道と東名高速を結ぶ路線になる。
同区間は1966年に高架方式で建設する計画を一度策定したが、地元住民の反対で凍結。今回、地下40メートルを超す「大深度地下方式」での事業化が正式に決まった。
完成すれば、関西や中部から東北を目指す大型車などが都心を通らないですむので、東京の慢性的な渋滞の緩和や物流効率の向上が期待できる。1兆3000億円近い事業費がかかるが、効果はその約3倍に上る。
一方、日本海沿岸東北自動車道のような経済効果が不透明な区間も入った。国交省は効果の第1に港湾とのアクセス改善による国際競争力の強化をあげるが、これでアジアとの物流が本当に増えるのか疑問だ。
2車線の高速を4車線に拡幅する事業を6路線190キロも盛り込んだ点も問題だ。渋滞や事故の状況を基準に選んだというが、実際には渋滞回数が少ない路線や事故が全国平均並みの道路も入っている。
地域振興や経済効果を考えれば、道路の拡幅よりも必要性の高い路線に予算を優先配分した方がいい。
新規と拡幅を合わせた総事業費は1兆8700億円に上り、その多くは税金でまかなう。道路特定財源を一般財源化しても、必要な道路を絞り込まなければ何も変わらない。
今回の計画は急きょ決まった。経済対策で公共事業費が増え、慌てて追加したのだろう。国幹会議でも委員の多くから「検討する時間もデータも不足し、審議しようがない」と批判の声があがった。
こんなやり方では道路行政に対する不信感を増すだけだ。国交省には徹底した情報開示を求めたい。