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平成21年5月1日
「高速道路ETC割引違憲訴訟」
報道発表資料
原 告 和 合 秀 典
(新党フリーウエィクラブ代表)
訴訟代理人
弁護士 吉 田 勧
(東京弁護士会所属)
1 高速道路のETC割引の実施
政府は、「新たな経済政策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議」において策定した「生活対策」の一環として高速道路の土日祝日の上限料金を1,000円とする割引や平日の全時間帯に3割引を導入するなどETCを活用した高速道路の料金引き下げを実施することを決定し、これに基づき独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構及び高速道路株式会社6社が「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」第7条に基づき、平成21年3月20日の本四及びアクアラインの休日特別割引を皮切りに、4月29日までに土日祝日に高速道路をETC搭載車で通行する場合にはどこまで走っても通行料上限1,000円とする事業を実施した。この事業に関する報道等を見る限り、
いずれも肯定的、歓迎的な報道が多いとの印象を受ける。
2 高速道路のETC割引の問題点
しかしながら、この制度には大きな問題点がある。
⑴ 第1に、この事業は「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」第7条により、「高速道路利便増進事業」として実施されるものであるが、同法第2条第4項によれば、同事業による高速道路料金の割引は、「当該高速道路を含む道路の自動車交通の円滑化のため必要と認められるもの」と規定されている(同条同項第二号)。
「生活対策」のために、同法で定める「高速道路利便増進事業」としての高速道路料金の割引を行なうのは、同法の認めていないことである。
⑵ 第2に、かつもっとも大きな問題は、この事業による高速道路通行料の割引はETC搭載車に限って適用されるものであるが、ETCの搭載には原則としてクレジットカードの利用が不可欠である。また、ETC利用のためには、自動車にETCの車載器を取り付ける必要があるが、その料金は1万5,000円近くかかる。東京、大阪などの大都市圏は格別、地方によっては公共交通機関が十分に整備されておらず、自動車はもはや贅沢品ではなく、生活必需品である。そうでありながら、クレジットカードを所持し、1万5,000円近い高額の車載器を搭載できる者でなければ料金割引制度を利用できないこととなる。
クレジットカードを所持していない者であってもETCパーソナルカードを作り、ETCを利用することは可能であるが、このカードを利用するには有料道路の平均利用月額の4倍の額または年間最高利用月額を2万円単位で切り上げた額のいずれか高い額をデポジットとして高速道路会社に預託する必要がある。この預託金は高速道路料金不払いに備えての担保であり、これを利用して高速道路を通行することはできず、毎月の利用料を口座引落しされることとなる。その上、未払いの(口座引落しの終了していない)高速道路料金がデポジット額の80%を超える場合や、利用実績によるデポジット額の増額に応じない場合には利用停止となる。このデポジットは、解約時に無利息で返還されることになる。
これらのことからすれば、いわゆる金融機関のブラックリストに載っている者、
低所得者や収入の安定していない者など、クレジットカードを作れず、
かつ高額のデポジットを預託し高額の車載器を装着できない自動車運転者は、
国の施策である高速道路料金の土日祝日割引などの恩恵を受けることができない。
憲法14条は、法の下の平等を定めるが、この平等原則は当然に、低所得者など生活困窮者を不利益取扱いしないことを含むものである。高速道路等の利用料徴収は、「道路整備特別措置法」第3条に基づき国土交通大臣の許可を受けて各高速道路会社が定めているものであり、今回の割引事業も「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」第7条により、国土交通大臣と協議し、その同意を得て実施されている。以上のように生活困窮者などが利用できない高速道路割引事業が、国民の所得の多寡などにより、生活困窮者などを不当に差別する事業であることは明らかであり、「道路整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」第7条に基づく国土交通大臣の同意が憲法14条に違反する違憲、違法なものであることは明らかである。
3 本訴訟の目的
本訴訟は、以上のような、ETC搭載車に限っての高速道路料金の割引が憲法14条に違反する違憲、違法なものであることを確認し、ETC搭載車でなくても割引を受けられる制度を実現するために、提起されるものである。
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