2009年5月3日8時36分
北海道産アズキで作ったお菓子をほおばる芝田山親方=大阪市東住吉区、伊ケ崎忍撮影
06年の国内のアズキ収穫量
釜の中であんこができあがっていく。湯気がのぼり、甘い香りが立ちこめる=北海道十勝支庁中札内村の六花亭の工場
なぜ北海道、十勝なのか。アズキは同じ畑に続けて作ると病害虫が発生しやすく、6〜7年の間隔が必要。広大な土地が必要で、気候も適していた。道立十勝農業試験場(芽室町)の島田尚典・作物研究部主任研究員(49)は「マメに栄養分を蓄える9月の十勝の気候は、日中は暑過ぎずマイルド、夜はぐっと冷える。実(み)にじっくりと糖分がたまるのに好条件」と話す。
主流の品種は「エリモショウズ」。寒さに強く、安定した収穫が期待できると、81年にデビューした。同試験場には、このアズキを大切に両手で包むデザインの記念碑がある。
島田さんは新たな品種を開発するたび、菓子メーカーや製あん業者に評価してもらうが、全員が一致することはあまりないという。「和菓子の原料になるアズキは嗜好(しこう)品。『風味』の正体を数値で表せないか研究を重ねているが、いまだに答えは出ません」と苦笑いする。
スイーツ王国といわれる十勝地方には「六花亭製菓」(帯広市)、「柳月」(音更町)など全国的に有名な菓子メーカーが本拠を置く。
3月、中札内村にある六花亭の工場を訪ねた。大きな釜で炊きあがったばかりのアズキあんが湯気を立て、甘い香りが漂う。糖度計で計りながら、甘さにむらが出ないように大きなへらであんを練る。
この道40年の菅徳美さん(58)は「マメは生き物。人間と同じで性質がみな違う。均一に仕上げるのが大切」という。
六花亭には「特別なマメ」とされるアズキがある。音更町の農家三浦正志さん(65)が作るアズキだ。「紫がかかった色も風味もダントツ。食べたとたんに違いが分かる。マメ本来の香りがするんです」と菅さん。
三浦さんは通常6、7年の輪作体系を、10年かけている。「人間の体力と同じ。地力の回復が必要だから」。魚の身を砕いたものを発酵させた肥料を畑にまくなど、土にもこだわる。