広い会場に足を踏み入れると馥郁(ふくいく)とした花の香りと豪華絢(けん)爛(らん)に咲き誇った色とりどりの蘭(らん)に圧倒された。それぞれの花に個性があり、いくら眺めても飽きない。
「おかやま蘭の祭典2009」が、六日までの日程で岡山市で始まった。中四国の蘭愛好団体や生産者らでつくる実行委が初めて企画し、岡山県内では三年ぶりの大規模な蘭展である。
純白やピンクのコチョウランなど約四千株をピラミッド形に飾りつけたメーン展示がとりわけ見事だ。愛好者らが丹精した逸品千六百鉢や岡山県内十一流派が出品する生け花なども会場を彩る。
洋蘭研究家江尻光一さんの「不思議植物・洋ラン」などによると、洋蘭栽培は十八世紀の英国で始まった。貴族や愛好家が、プラントハンターと呼ばれる採集の専門家をアフリカや東南アジア、中南米に送り込んで新種を集めさせた。
こうした園芸熱では日本も負けてはいない。幕末の江戸を訪れたプラントハンターは、園芸店が軒を連ねた町の様子に驚いているほどだ。富貴蘭や長生蘭などの東洋蘭の栽培では、熱狂的な愛好者も現れた。
日本人の園芸趣味は、こうした歴史を背景にしているに違いない。「蘭の祭典」会期中は園芸教室や楽器演奏などのイベントもある。植物とふれあうことで心は豊かになるだろう。