余録

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余録:安保理の仕事

 06年7月5日、北朝鮮は事前通告なしにミサイルを連続発射した。国連安全保障理事会では北朝鮮に対する決議案の文言をめぐり日米と中国などとの調整が難航し、英国などが修正案を出してきた。日本の国連代表部は修正案に乗る方向に傾いた▲しかし、東京には妥協の気配が見えず、代表部は焦りの色を濃くしていた。しばらくして「米国は降りる」との報が入り、代表部は「これで日本も妥協できる」と一斉にみんなの顔色が明るくなった。その日の午後、決議は満場一致で採択された▲当時、国連次席大使だった北岡伸一東大教授が経験の一こまを紹介している(「国連の政治力学」中公新書)。それから3年、安保理はまた北朝鮮問題で頭を悩ませている。日中首脳会談が11日行われたが、決議を求めていた日本は厳しい交渉を強いられているようだ▲安保理の仕事は「なんと言っても決議案(および議長声明)を作ることによって、国際社会の意思を明らかにすること」(北岡氏)という。しかし、国益がぶつかり合う場だから自国の主張を丸ごと通すのは難しい。外交力が試される局面である▲それにつけても、あれやこれやの理屈でミサイル発射の正当化を図る北朝鮮は、「理屈は後から貨車でついてくる」のたとえを地でいっているようにみえる。このフレーズは、かつて春日一幸元民社党委員長が使った▲結果を正当化する理屈はいくらでもつけられるという永田町的政治作法を指したものだ。何でも積める貨車は便利だ。だが、満載時と空車時の重量差が大きく常に脱線対策の考慮が必要という。“へ理屈”を積みすぎた北朝鮮の貨車はなおのこと危ない。

毎日新聞 2009年4月12日 0時10分

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