【モスクワ大前仁】谷内正太郎政府代表(前外務次官)の北方領土問題に関する「3.5島返還」発言をめぐり、ロシア国内では、日本側が4島返還に固執しない解決方法についてシグナルを送り始めた、との観測が出ている。だが、ロシア側はプーチン政権時代に「2島引き渡し」を明記した日ソ共同宣言(1956年)を軸に解決したい意向を示した経緯があり、「面積等分論」に歩み寄る可能性は小さい模様だ。
タス通信のゴロブニン東京支局長はコメルサント紙への記事で、谷内氏の発言について「明らかに来月11、12日のプーチン首相の訪日に狙いを定めている」と指摘。麻生太郎首相が外相時代に面積等分論に言及した経緯などに触れ、日本の政界や専門家の間で「分割論」の議論が活発になっていると紹介した。
これに対し、ロシアの対日問題専門家の間では、谷内氏の発言が領土交渉の活発化につながるか疑問視する見方も多い。ロシア戦略策定センターのコーシキン上級研究員は、日露双方で世論の支持を得るのに時間がかかる点などを挙げて、「2国間の正式な外交上の議題にはならないだろう」と分析する。ロシア外務省元高官は面積等分論について「真剣な提案と思えない」と一蹴(いっしゅう)している。
プーチン首相は大統領だった04年に、日ソ共同宣言に基づく「2島返還」による解決を提案したが、07年に「日本に拒否された。領土問題の解決は困難だ」と態度を硬化させた。
毎日新聞 2009年4月25日 0時20分