得意満面で子供用の片道切符を買って、自動改札機を抜けた真紀ちゃんは、人がいっぱいのホームに向かいました。ちょうど八時を回ったばかり、通勤ラッシュもいいところの時間帯ですが、そんなこともぜんぜん知らなかった真紀ちゃん、人の多さにただびっくり。
「間もなく、二番線に電車が参ります。危ないですから、黄色い線まで下がってお待ちください」
電車がやってくることを告げるアナウンスの後で、これまた人でいっぱいの電車がホームに到着しました。後ろから押されるようにして乗り込んだ真紀ちゃんは、ちっちゃいこともあって、あっという間に反対側のドアのほうまで押し込められてしまいました。
後ろでドアが閉まる音が聞こえたと思う間もなく、ガタン、と大きく揺れて、電車が動き出しました。おしくらまんじゅうのように、ぎゅうぎゅう詰めになった車内では、真紀ちゃんの小さな体は背負ったお弁当ごと潰れてしまいそうです。
次の駅では、さらに乗り込んできた人たちに押されて、奥へ奥へと押しやられてしまいました。次の次の駅では、とうとう車両と車両を結ぶ連結器のところまで押されて、せっかくのよそ行きのお洋服がぐしゃぐしゃです。
連結器のところは、鉄板が組み合わされているだけですから、電車が揺れるたび、足元もぐらぐらします。出口を塞がれてしまっているために、抜け出すこともできない真紀ちゃん、仕方がないので、反対側のドアのほうに向いて、じっと我慢することにしました。
ドアの向こうの車両も、真紀ちゃんのいる車両も、すごい人込みです。あまりの人の多さと、揺れる足元に気をとられて、スカートがめくれてしまっていることにも気がついていない真紀ちゃんでした。