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草なぎ 剛「淋しき泥酔」

AERA4月27日(月) 12時15分配信 / 国内 - 社会
――人気グループきってのいい人。女性のカゲもない、「草食」な存在。
そんな34歳が真夜中の公園で全裸になった。「異常行動」に走らせたモノとは――。

 奇行は、1年前にもあった。
 都内の30代の会社員の男性はその夜、東京ミッドタウン内のホテルに泊まっている知り合いから、電話を受けた。
「クサナギ君がいるよ」
 別の場所で友人と飲んでいたが、急いでミッドタウンに移動した。深夜でも営業しているカフェで、彼が飲んでいた。連れもなく、一人だった。

■スエットのパンツを…

 スエットの上下。部屋着のようで、顔は赤かった。友人と一緒に様子をうかがっていたら、彼が気づいた。
「一緒に飲もうよ」
 と声をかけられた。もちろんまったくの初対面。気さくな態度に驚いた。みんなで缶ビールを飲んだ。口調からは明らかに酔いが感じられたが、友人と飲んでいるようにリラックスして、楽しそうだった。
「慎吾って、ほんとうにいいヤツなんだよ」
「自分は、SMAPが本当に好きなんだ」
 他に客がいない店内で、もっぱら彼が、大きな声でしゃべり続けた。
 1時間ほど過ぎたころだったか。彼が突然、スエットのパンツを脱ぎだした。下半身が見えそうになった。驚いた。「まずいですよ」と止めに入った。彼は少し抵抗したが、結局、みんなでズボンをはかせた。従業員がさりげなく彼を店から連れ出して、上階に案内していった。
「従業員は、手慣れているように見えました」
 ホテルと隣接する住宅棟に住む彼にすれば、気軽に自宅に客を招くようなものだったのかもしれない。
 その夜の勘定は、彼が支払った。男性会社員は言う。
「いい人だったけど、お酒を飲むとダメなんでしょうね」
 4月23日、「SMAP」メンバーの草なぎ剛容疑者が、公然わいせつ容疑で逮捕された。場所はミッドタウンに隣接する檜町公園。午前3時頃、近隣のマンションの住民から「公園内で酔っぱらいが騒いでいる」と通報があった。

■女性店員と2軒目に

 警察官が駆けつけると、男性が全裸でいた。人気のない深夜の公園で、奇声に近い叫び声をあげていた。
 警察官3人に取り押さえられる際には抵抗し、
「シンゴー!」
 と叫んでいた。メンバーの香取慎吾に助けを求めたのだろうか。呼気からは、1リットルあたり0・8ミリグラムのアルコールが検出された。検査は、逮捕から5時間後のこと。逮捕時は、ひどい泥酔状態だったと見られる。
 当日の足取りはこうだ。
 オフだった。午後8時過ぎから日付が変わる頃まで、赤坂の和食店で飲食をしていた。旬の野菜料理や皿うどんが評判の店だった。テーブル席だけで、VIPルームがあるような店ではなかった。
 午前1時近くになって、近くのダイニングバーに歩いて移動した。
 バーに現れた彼は、デニムのジャケットにジーンズ。女性1人が一緒で、しばらくすると男性が合流した。女性は1軒目の店の従業員、男性は店主だったようだ。
 みんなでコロッケに似た「クロケッタ」という揚げ物を注文した。彼は、店に入ってきた時点でかなり酔っていたが、生ビールを2杯飲んだ。マスターが「そろそろお帰りになられたら……」と声をかけた。
 店を出る時、彼のおぼつかない足取りを不安に思ったマスターは、一緒に来ていた女性に「タクシーに乗せたほうがいいのでは」と助言した。マスターは、2人がタクシーに乗り込むところを見た。

■「芝生ステージ」の上で

 その1時間後に、彼は全裸で公園にいた。
 SMAPが所属するジャニーズ事務所から歩いて5分ほどの檜町公園。ミッドタウンがそびえたつ。23時にはトイレも施錠されて鎖で囲われるが、簡単にまたいで入れる。
 夜の公園に、記者も立ってみた。
 昼間は近隣のサラリーマンや近くの幼稚園の子どもなどでにぎわう公園に、人影はない。都会の中心に空いた穴の中にいるようだ。
 物音もしない。一人で取り残されたような孤独と、誰もいない安心感を同時に感じる。街灯はほとんどないが、薄い灯りが届く範囲が、ステージのようにも見える。芝生はひんやりと冷たい。警察官が到着した時、彼はその芝生にあぐらをかいて奇声を上げていたという。
 人気グループで、ずっと「5番目の男」だった。器械体操の経験者で踊りは得意だったが、ステージ上でのトークでは、他のメンバーから「始まって20分もたつのに、ツヨシがひと言もしゃべっていない」などと、突っ込まれる。突っ込みを受ける返事が、またとぼけている。無口なボケ役だ。
 他のメンバーが単独で主演して高視聴率をたたき出したテレビドラマでも、初めて主役になったのは、結成10年目。人気マンガをドラマ化した1997年の「いいひと。」だった。本人のキャラクターが役にはまった。
 本誌で「業界コンフィデンシャル」を連載中の松本佳子さんは、このドラマの当時、単独インタビューをした。発言から、木村拓哉や中居正広に対するコンプレックスのようなものを感じた。
「彼にとって当時の木村君はあこがれの存在で、電話番号も聞けないと言っていました。自分がSMAPにいることに違和感があったようです。そんな彼が、個性を伸ばすために学んだのが、韓国語だったのでしょう」

■「草食タレント」1位

 2001年に学び始めた韓国語への執着は、相当なものだった。映画「シュリ」の主演俳優ハン・ソッキュが自分に似ていると気づいたのが、きっかけ。「楽屋でいつも韓国語のDVDを見ている」と、メンバーが驚くほど熱中した。日本語では無口な彼が、韓国語になると饒舌になり、生き生きとした。韓国では「親韓派」として、名前のハングル読みの「チョナン・カン」と呼ばれて人気が上がった。
 あまりに熱心なので、「韓国の美人女優とつき合っているのでは」という噂が流れたこともあった。しかしそのまま噂は立ち消えに。女性スキャンダルとは、これまでずっと無縁だった。最近、「草食系」をイメージするタレントを調べた調査で、1位に選ばれた。
 演技も生きる道になった。03年に余命いくばくもない若者を演じた「僕の生きる道」では9キロ体重を絞って、鬼気迫る演技を見せた。映画では03年にヒット作「黄泉がえり」に主演し、大作「日本沈没」にも抜擢された。「いい人」の代名詞になり、CMの本数も増えた。
 舞台でも、貴重な存在になった。演劇評論家の梁木靖弘さんはこう言う。
「99年につかこうへいの『蒲田行進曲』で大部屋俳優を演じた。痛々しさのようなものがプラスになっていた。ただ、やはり俳優としてはいい人キャラが出過ぎて、引っかかりがない。配役をする時、消去法で残る存在になっていたきらいはあります」
 舞台で評価されても、あくまで「5番目」という位置づけは変わらない。梁木さんが舞台「蒲田行進曲」を観に行った時、客席に木村が来ていた。カーテンコールで彼が木村にニコニコと手を振った。すると、客席のほぼ全員が木村のほうを向いたきりになったという。
 説教バンド「ロマンポルシェ。」のリーダーで、テレビ界に詳しい掟ポルシェさんもこう話す。
「レーサーになって脱退した森さんがいたときから、いつも6番手だったので、一番であることの矜持を知らない。つまらないわけではないけれど面白くもないキャラだった半面、どんな役回りでもこなしてくれる印象があった」

■ホテル廊下で赤い顔

 ジーンズやスカジャンといったビンテージもののコレクターとして知られたが、もう一つの「趣味」が酒だった。ビール、ウイスキー、焼酎と何でもいけた。相手がいなくても一人で飲んだ。
 派手な車を乗り回したり、女性と交際したりという表面的な危うさがない一方で、酒にまつわる逸話は、熱心なファンや関係者の間では知られていた。
 公然わいせつで逮捕というニュース速報に不安を募らせていたファンは、「酔っぱらって裸になった」という容疑の内容を知ると、胸をなで下ろした。
 都内に住む47歳の女性ファンは、こう感想をもらした。
「いつかはやるんじゃないかと思っていたから……女性がらみじゃなくてよかった」
 SMAPのライブ中に、メンバー5人によるトークが毎回、30分ほどある。地方公演の場合は「前の晩に何を食べたか」という話題になることも多い。そんな時に彼はよく、こう答えた。
「昨日の夜、飲み過ぎて木村君に怒られちゃったよ」
 深夜、ホテルの貸し切りフロアの廊下を赤い顔で歩き回り、飲む相手を求めてメンバーの部屋をノックする。ホテルのバスタブで、服を着たままシャワーを浴びたこともある。メンバー中最年少で、彼が最も仲が良いと話していた香取は「酔っぱらった、『つよぽん』の世話が大変だ」とこぼした。
 そんな彼の酔った時の口癖はこうだった。
「俺はね、SMAPのメンバーじゃなくて、一人の男として話したいんだよ」

■「社会的な自殺だ」

 前出の松本さんはこう言う。
「人気番組『「ぷっ」すま』でも、番組内でビールを飲んでいるうちに、ハイテンションで妙に陽気になることもあった。十数年以上、国民的アイドルでいることのプレッシャーは相当なものだったと思いますね」
 誰だって酒を飲んで、日頃とは別キャラで振る舞いたいと思う時があるだろう。今回の事件は被害者がいるわけでもない。何も逮捕までしなくても、とも感じる。しかし、人気者が背負った代償は大きい。
 所属のジャニーズ事務所は、事件当日の夕方、「当面の活動自粛」を発表した。事実上の謹慎処分だった。SMAPでは01年に稲垣吾郎が道交法違反などで逮捕され、約4カ月間、謹慎した。撮影済みの映画、今夏に主演すると言われていたドラマへの影響は避けられない。
 飲酒行動に詳しい兵庫医療大学の磯博行教授はこう言う。
「集団で騒いで裸になるのは、学生でもよくありますが、一人というのは異常な行動。普段は平気な量でも、ストレスがかかった抑圧状態で酔いが急速に回ることはあり、まじめな人ほど起きやすい。半ば悪いとわかっていてやったのではないか。気の毒だが、彼の行動は社会的な自殺と言ってもいい」
 ジーンズなど衣服は、靴とともに、きちんとたたんでまとめてあったという。
(文中一部敬称略)
編集部 井上和典、大波 綾、伊東武彦
(5月4-11日号)
  • 最終更新:4月27日(月) 12時15分
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