※ この物語はフィクションであります。
実在の人物・団体・事件・ゲーム等とは一切関係ございません。
また、性交渉する人物は全て18歳以上です(笑)。
フォズ大神官の受難 〜ケース1・転職の限界点〜
ここはダーマの神殿……
新たな人生を志す人々のが集う場所。
一時は魔物の支配により、すっかり寂れていたこの場所も、元の賑わいを取り戻しつつある。
それどころか、以前よりも賑わっている気配すらある。
転職の儀式を取りしきる大神官は、まだ幼さの残る…つうかそのまんま幼い少女であった。
彼女の名はフォズ。
儀式用の豪華なローブに身を包んだその姿は、幼いながらも威厳に満ち溢れている。
理知的でかつ可愛らしいこの少女の姿を一目見るために一日に何度もここを訪れる者も多いとか、
裏では隠し撮りされたプロマイドが天文学的値段で闇取引されているとか、
時代を超えて未来からわざわざ転職しにやってくる奇特な者までいるとか、彼女に関する噂は絶えない。
日も暮れ、閉殿時間も近づいてきた頃、フォズは最大のピンチを迎えていた。
(うう…おしっこ、したい……)
途切れる事の無い転職を望む人々の行列に日が昇る頃から休み無く対応してきたフォズ、
まだ幼い膀胱は、既に数時間前から尿意を訴えていた。
しかし、生真面目な気性のフォズは、職務を投げ出してトイレに駆け込む事を良しとせず、ひたすら耐え続けていた。
やがて行列の終りが見え始め、フォズは心の中で安堵のため息をつく。
「では、戦士の気持ちになって祈りなさい…」
表面上は穏やかかつ荘厳に、しかし分厚いローブの下で、人に悟られぬように膝小僧をもじもじと擦り合せながら、
既に何万回繰り返してきたか判らない転職の儀式の言葉を口にしつつ、ひたすら耐え続ける…
ようやく最後の一組、それは彼女の良く見知った顔ぶれだった。
「やっほ〜〜、また転職しに来てあげたわよ〜〜☆」
オレンジの髪をほっかむりで被せた姿がチャームポイントと信じて疑わない、
一見良家のお嬢様、口を開けば最凶最悪の馬鹿娘と誉れの高い、自称深窓の御令嬢魔導師、マリベルである。
「ガボの奴が絶対あんたの所じゃないと転職したがらなくてさぁ」
傍らの少年を小突きながら言う。
少年の名はガボ。
本性はある地方を守護する聖獣であるが、魔物の呪いで人の姿になった。
もっとも本人はこの姿を気に入っていて、元に戻る気はさらさら無いようだが。
「はぁ、そうですか……」
(こいつが来なければおトイレに行けたのに、余計な事を言い出さないでよ、もう…)
表面上は引きつりながらも笑顔を装いつつ、フォズは心の中で舌打ちした。
「よう、フォズ、随分繁盛してるみたいだな。」
最後に3人組みの(便宜上)リーダー、アルスが挨拶する。
彼がリーダーを勤めているのは有事の際の身替わりとしてであり、パーティの実権はマリベルが握っているのは言うまでも無い。
「こっちはあんまり儲かって無くてさ、せっかく盗賊に転職したってのに、敵は全然宝箱を落とさないし、全滅ばかりで金は溜まらないしで散々だよ。この前の戦闘じゃガボの奴が……」
ぺらぺらと良く喋り捲る。
ゲーム上では彼の台詞は表示されていないが、結構饒舌な男のようだ。
5分経過…
アルスは喋り続けている。
(あうう、まだ終わらないのかしら、こっちはそれどころじゃないのに…)
10分経過……
アルスはまだ喋り続けている。
(う〜〜っ、こう言う時に限ってどうでもいいような話をくどくどとぉっ…早く…早く終わってぇっ!!)
15分経過………
アルスはまだ(以下略)。
(ああ…もうだめ…目の前が…白く……)
「っていいかげんにせいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
怒声、そして轟音が響き渡り、アルスが吹き飛ぶ。
「いつまでくっちゃべっとんじゃぁあんたわ!こっちは早く転職済ませてカジノで遊びたいのよっさぁちゃっちゃと終わらせてちゃっちゃと帰るわよっ!!」
長話に痺れを切らしたマリベルが飛び膝蹴りをかましたのだ。
(ああっマリベルさん、実は良い人だったのね性格極悪とか本当はラスボスなんじゃないかとかこの性格じゃヒロインの交代は目に見えてるわね当然代わりは私☆とか思っていてごめんなさい、あなたとは良いお友達になれそうだわ…)
自分のしたかった事を代行してくれた少女がフォズには光り輝く天の使いに見えた。
「いてててて……それじゃ仕方ない、さっさと転職をするか。とりあえず俺は海賊に…」
「ちょっと待ちなさいよアルス、何あたしを差し置いて上級職になろうとしてんのよ。あんたなんか戦士で充分よ」
「おいおい、お前が上級職になれないのはこんな職業やっぱり嫌とか言ってころころ職業変えまくってる所為じゃねえか。いわば自業自得だろ?」
「うるさいわね、あんたに先越されると何となく腹が立つのよ!」
喧々囂々…
(ああ…どうでもいいから早く決めて…)
脂汗を流しながら耐えているフォズ。
ローブの下の小さな可愛らしい足は絶え間無く足踏みを繰り返している。
「ああもう、このままじゃ埒があかないわ!あたしたちはあっちの部屋で『話し合い』をしてくるから、ちょっと待っててね」
「はぁ…」
(い、今のうちにおトイレに…)
「おいらはどうすればいいんだ?」
「ガボは憧れのフォズちゃんと世間話でもしてればいいでしょ?じゃ、行くわよ、アルス!!」
言い放つとマリベルはアルスを引きずりながらこの場を後にする。
(無理なのね…)
「わぁい、フォズ大神官だぞ、本物だぞ、いっぱい、いっぱいお話するぞ」
ガボは嬉しそうにフォズを眺めながら一方的に話しまくる。
ここまで間近で見られていては、足をもじつかせると気付かれてしまう。
男性に比べ、遥かに短い尿道と括約筋のみで襲い来る強烈な尿意と戦わねばならない……
絶望的な状況にフォズは心の中で涙した。
「おっまたせ〜〜〜☆」
しばらくして、アルスとマリベルが戻ってくる。
「いやぁ、散々迷ったけど俺、戦士になる事に決めたよ。いやぁ、世の為人の為に剣を振るうってとっても素晴らしそうだなぁ」
そういうアルスの顔にはいくつも青痣ができている。
むこうで何があったのかは説明の必要すらないだろう。
アルスの転職が終り、次はマリベルの番であるが…
「じゃ、あたしは賢者になろうかしらね」
「…無理です」
「何でよ?このあたしほど賢くて美しいみんなの憧れの的みたいな美少女がどうして賢者になれないのよ?」
マリベルは不満そうに口を尖らす。
「だってマリベルさん、魔法使いも僧侶も極めていないじゃないですか、中途半端に修行しても駄目なものは駄目ですよ」
フォズの言葉に、マリベルは自尊心を傷つけられ、キレた。
「なによソレ、納得いかないわよ!大体誰のおかげでこのダーマ神殿を復興できたと思っているの才色兼備その他諸々を兼ね揃えたマリベル様のお陰じゃないの責任者呼びなさいよ責任者そもそもあんな何度も何度も戦闘繰り返さないと職業極められないっておかしいわよ美しきマリベル様には修行なんて必要無いのよ最初っから全ての職業極められて当たり前なのに何よこの扱いは大体ねぇ…」
目の前の少女にありったけの不満をぶつけまくるマリベル。
そのマシンガンのように放たれる言葉は止む気配すら見せようとしない。
(も…もう…駄目……)
既に膀胱の容量は限界を超え、いつ吹き出してもおかしくない迸りを気力と大神官としてのプライドのみで必死に押さえ込むフォズ。
しかし、このままではそれもいつまで持つか判らない。
一瞬でも気を抜けば、太腿からローブから床までも彼女の排泄した液体でぐっしょりと濡らし、これまで彼女が築き上げてきた大神官としての誇りも、聖女として崇められてきた格式も全て失い、神殿内で失禁した恥ずかしい娘の烙印を押されてしまう事だろう。
(嫌…そんなの、嫌・・…)
フォズの可愛らしい瞳から大粒の涙がこぼれる。
それを見たアルスがマリベルを非難する。
「おい、マリベル、あんまりフォズちゃんを苛めるなよ、いくら自分より可愛いからって僻む事無いだろが」
「誰が僻むかぁ!…判ったわよ、もっかい魔法使いで修行し直してあげるから…フォズ、あんたもこんな事で泣く事ぁ無いでしょ…」
「ひっく…は…はい……」
こうしてマリベルの転職もつつが無く終了し、残るはガボ…なのだが……
「やだやだやだぁ!おいら転職はフォズ大神官になるって決めてたんだぁ…」
「…ですから、そんな職業有りませんって。」
……もはやどんな状況なのか、説明の必要すら無いだろう。
ひたすら駄々をこねるガボ、それを内部からの苦痛に顔を歪めながらも必死で説得しようとするフォズ。
(ああ、本当に限界……)
フォズは、完全に屈しかけていた。
その時、助けは意外な所から現れた。
「い加減にせいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
ごうん
殿中を揺るがす轟音、吹き飛ばされる轟音。
「ひぃっ」
フォズは思わず両手で股間を押さえる。
今の衝撃で少しチビってしまったのだ。
轟沈するガボ。
彼を正拳突きで吹き飛ばしたのは、マリベルだった。
「全く、あたしはこれからショッピングを楽しむってのに、いつまで時間かけてんのよ!…あれ、ガボ寝ちゃったわね、これじゃ転職できないわね…って事でさっさと行くわよ!」
言うと完全にのびているガボをずるずると引きずりながら慌ただしく神殿を出ていった。
(た、助かった……)
フォズはその場にへたり込みそうになるが、慌ててそれを食い止める。
もしここで座ったりしたら立ちあがる時に確実に漏らしてしまう。
手を太腿の間に入れ、よちよちとトイレに向けて歩き出すフォズ。
その姿に大神官としての威厳はまるで無い。
しかし、顔中汗と涙と鼻水にまみれ、それにも気付かない程余裕の無いフォズには、そんな事はもはやどうでも良かった。
(あと少し…あと少しで…トイレに…)
その思いのみが身体を動かし、通路を進むフォズ。
そんな彼女の前に一人の男が立ち塞がる。
既に帰っていたと思われていたアルスだった。
こんな姿を晒す訳にはいかない、フォズは最後の力を振り絞り、姿勢を正す。
そして、汗まみれの顔を無理矢理笑顔に形作り、
「な…なんで…す…か…?」
必死にそれだけを苦痛に歪んだ唇から紡ぎ出す。
涙ぐましい大神官としての根性。
しかし、その問いに対する答えは非情なものだった。
「やっぱりさぁ、俺、海賊になりたいんだよね?ほら、戦力アップにもなるし。幸いマリベルも見ていないし、こっそり転職させてくれないか?」
無理矢理作ったフォズの笑顔が凍りつく。
(も、もう一回転職…あそこまで戻って…もう一回儀式やって…嫌…無理…もう出ちゃう…)
冷静に考えればトイレに行ってから転職すりゃいいじゃねえかとか思うが、既に限界を超えていたフォズに、そういった考えは思いつかなかった。
「だ、駄目…」
「え?そんな事言わずに頼むよ」
「い、嫌、も、もう、で、出ちゃう、出ちゃうのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
響き渡る絶叫、そして一瞬の静寂の後……
じょろじょろじょろじょろじょろじょろじょろ〜〜〜〜〜〜〜
激しい水流の音。
そして、しばらく後、変色したローブから漏れ出した液体が湯気を放ち、大理石の床を叩く音が辺りに響く………
「ああっ、みっ、見ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
泣き叫ぶフォズ。
しかし2人ともとっさの事で動けない。
結局フォズの体内から全て出尽くしてしまうまで、2人はそのままの体勢で固まっていた。
しばらくして、ようやく動けるようになったアルスが口を開く。
「その…ごめん…まさか、我慢してたとは思わなかったから…じゃ、そういう事で!」
シュタッ、と、右手を上げると、アルスは爽やかさを装いながらその場を逃げ出した。
「ひっく…ひっく…」
後には床を濡らし、へたり込んだまま絶望感に動けないですすり泣いているフォズの姿だけがあった。
ケース1:おわり