Page 177 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼消えた花嫁の行方と殺人事件。 ディクシー 01/8/18(土) 11:16 ┣美男美女夫婦 くりちゃん 01/8/19(日) 10:22 ┗訂正? ディクシー 01/8/20(月) 23:26 ┗美男美女夫婦その2 くりちゃん 01/8/27(月) 12:27 ┗新郎新婦の噂 青い空 01/9/4(火) 2:06 ┗披露宴は始まる 瑤香(元ディクシー) 01/9/24(月) 16:04 ┗殺人事件発生。しかし・・・ 青い空 01/9/24(月) 19:30 ┗寄りによって・・・ 瑤香(元ディクシー) 01/9/24(月) 19:49 ┗容疑者を探す 青い空 01/9/27(木) 21:02 ┣その後 沙耶 01/9/28(金) 16:15 ┃ ┗その後 瑤香 01/9/29(土) 19:06 ┃ ┗被害者は・・・ 青い空 01/9/30(日) 17:08 ┃ ┗彩の推理 瑤香 01/9/30(日) 17:40 ┗恵美の心理は? 瑤香 01/9/30(日) 17:39 ┗招かれざる客 青い空 01/10/3(水) 20:30 ┗それで なっち 01/10/4(木) 17:13 ┗てなわけで 瑤香 01/10/7(日) 20:02 ┗初江の話 青い空 01/10/8(月) 17:43 ┗そして 瑤香 01/10/9(火) 16:12 ┗落ちてきたもの ルリ子 01/10/9(火) 17:06 ┗警察登場 瑤香 01/10/10(水) 14:43 ┗次は・・・ 青い空 01/10/10(水) 17:42 ┗京都で 瑤香 01/10/12(金) 13:41 ┗舞台は移って 青い空 01/10/13(土) 16:08 ┗尾行は続く 瑤香 01/10/14(日) 2:39 ┗終結 青い空 01/10/23(火) 23:24 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 消えた花嫁の行方と殺人事件。 ■名前 : ディクシー <yokorin27@hotmail.com> ■日付 : 01/8/18(土) 11:16 ■Web : http://www.geocities.co.jp./Playtown-King/4582/index.html -------------------------------------------------------------------------
高校時代の先輩の結婚式に招待された神田恵美。18歳。専門学校生。 昔からお転婆娘で、周りにはいつも男の子っぽいと言われていた。 だが今日の彼女は、女らしくスーツを着こなしていた。 待ち合わせ場所で、親友の佐々木瑶子と待ち合わせている。 「ごめん、待った?」 と恵美。 「全然」と瑶子は答えた。 二人は式場内へ入った。 偶然、花嫁が聖堂へ向かうところに二人は出くわした。 瑶子「先輩・・・綺麗・・・」 恵美「言えてる・・・」 男っぽいイメージで見られている恵美は、どちらかと言うとこう言うのは自分には似合わないな・・・と考えていたのだった。 |
花嫁代(はなよめよ)は真っ白なウエディングドレスを着ている。 嫁代の夫になる新郎男(しんろうお)も立派な格好をしている。 「おお、美男美女夫婦。」 恵美は思わずそう言ってしまった。 |
>高校時代の先輩の結婚式に招待された神田恵美<かんだめぐみ>。18歳。専門学校生。 >昔からお転婆娘で、周りにはいつも男の子っぽいと言われていた。 >だが今日の彼女は、女らしくスーツを着こなしていた。 >待ち合わせ場所で、親友の佐々木瑶子<ささきようこ>と待ち合わせている。 >「ごめん、待った?」 >と恵美。 >「全然」と瑶子は答えた。 >二人は式場内へ入った。 >偶然、花嫁が聖堂へ向かうところに二人は出くわした。 >瑶子「先輩・・・綺麗・・・」 >恵美「言えてる・・・」 >男っぽいイメージで見られている恵美は、どちらかと言うとこう言うのは自分には似合わないな・・・と考えていたのだった。 |
花嫁代(はなよめよ)は真っ白なウエディングドレスを着ている。 嫁代の夫になる新郎男(しんろうお)も立派な格好をしている。 「おお、美男美女夫婦。」 恵美は思わずそう言ってしまった。 |
「そうかしら?」 隣から冷水の滴る声が聞こえた。声の主は分かっている。恵美の元同級生の水崎彩だった。絹より艶やかな髪をアップにし、傷一つない白磁を思わせる肌、一流の彫刻師の賜物としか思えない各部分の造形、モデル顔負けのスタイルなどは結婚式の招待客の目を引き付けるのに十分過ぎた。 「遠路はるばる京都から来て、その台詞?京都大学でもそれで通しているの?」 恵美の嫌味に、彩は声を低めて答えた。 「私、京都にずっといたから知らなかったけど、あの新郎新婦どっちも結婚直前にかなり異性関係清算で大変だったらしいよ」 「誰から聞いたの、それ」 「新郎の親戚らしい人から。私、新郎の愛人じゃないか、疑われたのよ」 彩は不機嫌さを顔から滲み出していた。無理もないか、と恵美は苦笑した。 |
彩があんなこと思うなんて、と思いつつも恵美は披露宴が始まるのを待っていた。 |
披露宴が始まった。新郎新婦の入場が行われると、司会の合図と同時に盛大な拍手が沸き起こった。新郎新婦共に緊張しているがその姿はとても凛々しかった。 「きれいね」 「ああ、私も早く結婚したいな」 恵美と遥子は羨望の眼差しを向ける。 「可愛い花嫁って若いうちだけね」 彩も一応花嫁をけなすことはしなかった。ただ機嫌がまだ直っていないのか、言葉にかすかに毒があるのに恵美は気がついた。遥子はさらに出席者の多さに驚いていた。 「盛大よね」 「そりゃ、親族・友人だけでなくて、仕事関係などもいるからね」 「愛人関係もいたりして」 「いるわけないでしょ」 彩の毒舌を恵美がたしなめた。 「でも、新郎新婦とも過去の男・女が何人か出席しているみたいよ」 彩の言葉に遥子は驚きを隠さなかった。同時に新郎新婦に不可解さを感じた。遥子なら絶対呼ばない・・・そんな思いはあった。 その時だった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・!! 「何か部屋通らなかった?」 恵美は遥子に耳打ちした。 「そうかな・・・」 遥子は何も見えなかったようだ。 「何、あれ・・・」 会場からそういう声があがった。新郎新婦の方に視線を向けると、新婦の胸が赤く染まっていた。赤、それは鮮血の色だった。 恵美を始め会場内の客が恐怖の余り、立ちすくんだままざわつくしか出来ない人が大多数の中、倒れた新婦に駆け寄った女がいた。彩だった。 「医学部行く奴は違うね・・・」 遥子はそう呟いたが、恵美も同感だった。昔からリーダーにはならないが、いざという時頼りになるのが彩だった。彩は必死に救命処置を施していた。 その彩が戻ってきた。 「どうだった」 恵美の問いに、彩は疲れた声で答えた。 「矢が心臓を貫通していたわ、おまけに毒も塗ってあるらしいの、あの矢には」 「ってことは・・・」 「もう死んでる。さっき、会場の人に警察呼ぶように言ったわ。しかし、どっちの家族もこの事態なのに警察は勘弁してってさ。何か隠しているのかしら」 彩の言葉に、恵美も遥子も同感だった。更に彩は毒づいた。 「容疑者、何人出てくるかしらね」 5分後、警察が大勢でやってきた。おめでたい会場が一転、悲劇の会場に変わってしまった。 |
「何だ、君たちか」 聞き覚えのある声だった。 「白石さん!」と恵美。 夏休みに起きた事件で、恵美たちと共に事件を解決したのがこの若い白石刑事である。 |
彼の話に寄ると、今遺体の司法解剖と関係者への事情聴取、現場検証が同時進行で行われているとのことだった。 「こっちとしても早く解決したいし、おまけにマスコミが嗅ぎ付けているみたいだし」 「容疑者・・・みたいな人はいるんですか?」 恵美の質問に、白石は困った顔をした。 「何人か、動機がある人間は挙げているけど、決定的な証拠がないとね」 「でも、矢を仕掛けるのって前もって準備しないといけないから、かなり絞れるんじゃないの」 遥子の言葉を否定したのは、白石ではなく彩だった。 「それでも何人も残るんじゃないの」 「あれ、こちらの方は?」 白石は彩と初対面だった。恵美が彩と白石をそれぞれに紹介する。 「水崎・・・か」 白石の口調はやや歯切れの悪いものであった。 恵美、遥子、彩の3人は、披露宴会場の建物内の喫茶店で食事をしていた。あの披露宴の出席者は全員足止めを食らっていたのだ。折角のご馳走も食べることが出来なかった。 「一応、関係者の人間関係を調べた方が良いかもよ」 恵美の言葉に、彩はバッグからメモ紙を取り出した。 「さっき、記憶を思い出してメモしたんだ」 「よく調べたわね・・・」 「始まる前に親戚連中が悪口言っていたのを聞いていたから。まさか、こんなことになるとは・・・いやよね」 「なるほどね、新郎も殺す動機ありだし、過去の男女関係、お金関係からすると親戚などもね」 恵美が感心していると、遥子は口を開いた。 「そういえば、新郎の前の恋人で自殺図ったのいるらしいよ」 「いつ?それ」 「聞いたところによると、2年くらい前かな」 「その頃は高2か・・・」 恵美は妙なことに関心をしていた。 「一応、人間関係を整理しとこ」 遥子の言葉で他の2人もメモに視線を向けた。 「・・・で、花婿の他に、花婿の過去の女として香川愛、高野美紀。前者は大学の後輩で後者はクラブホステス] |
修之「そんな事があったのか?」 恵美「こら!真面目に聞きなさいよ!」 ドン、とテーブルを叩く恵美。 瑶子「恵美、ここ…学校じゃなくて喫茶店よ」 恵美「あ。いけない」 想わず恵美は舌を出した。 修之「しかし結婚式でそんなこと起こるかなあ…」 みゆき「私も信じられないわ」 |
恵美達四人は彩を呼ぶハメになった。 |
彩は親戚の家に泊まっていた。捜査の進行状況を見て、京都に帰るという。勉強が大変だから・・・というのが理由である。 「大勢で押しかけて悪いね」 「今日、叔母さんも出かけているから大丈夫」 修之の言葉にそう答えた彩が人数分のジュースを持ってきた。その時、テレビではニュースが始まっていた。 「今日の事件やるかな・・・」 「やるだろ、普通」 修之の言う通り、ニュースでは女性キャスターが、トップニュースとして結婚式での惨劇に関する原稿を読んでいた。 「嘘・・・」 遥子の口から、そんな言葉が漏れた。無理もないと恵美は思う。思いは同じだから。 「・・・結婚式で花嫁が殺されるという事件が起こりました。被害者は、品川区在住の女性、高野美紀さん26歳と分かりました。警察では、本来この結婚式の花嫁になるはずだった女性が行方不明でこちらの行方を追っています。」 「何だよ、これ」 「いつ入れ替わったんだろ」 「先輩はどこ行ったの?まさか先輩が・・・」 ニュースが終わった後、皆口々に疑問を言う。当然であった。 「私、この人一度見たんだよ。控え室で」 彩はそう言った。服装は青いドレスだったという。 「花婿は入れ替わっていたことに気づかなかったのかな」 「それはないな。少なくとも今の女と過去の女が見分けられない男はいないはずだ。女だってそうだろ」 「まあね」 みゆきが髪をかきあげながら、口を開く。 「先輩は容疑者?」 「少なくとも、重要参考人だな」 修之の言葉に、恵美は暗澹たる気持ちになった。先輩の無実を信じたい恵美にはつらい。 「夕食、簡単なもので良いなら作るけど・・・食べていく?」 彩の言葉に、全員首を縦に振った。 食事後、彩の所をあとにした4人は、やはり事件の話を続けた。 「入れ替わっていたこと、知っていたの、花婿だけではないぜ」 修之の言葉に、恵美達は「えっ?」と一斉に彼の方に視線を向けた。 「彩だよ。あいつ助けようとしていたんだろ。その時、見てるだろ・・・被害者の顔」 恵美はあとにしてきた彩の親戚の家の方に視線を向けた。他の二人も驚きを隠せないようだ。 「そっか・・・」 「隠していることあるんじゃないかな・・・」 「俺もそう思う」 |
「犯人はあの中にいることは間違いないわね」 と彩が言った。 |
自宅の自分の部屋で恵美は考えていた。 先輩が殺しなんて・・・信じたくない。 その重いが恵美の脳裏を駆け上がった。 恵美は長い髪を風呂で洗っていると、 「恵美ー電話よ!」 と母佐由理の声がした。 「今出る!」と恵美は答えた。 バスローブを羽織って、受話器を取る。 「はい、恵美です。あ、白石さん?」 「入浴中、悪いね」 「いいんです、もう出たから」 「事件のこと、こっちでは結構調べたんだ。でも一つ気がかりなのが逢ってね。 招待状を君と瑶子君と彩君はもらっているんだね?」 「はい」 「それ、ちょっと借りれないかな。筆跡鑑定をしたいんだ」 「ええ。」 「君の先輩の、疑いを晴らしたいからね。こっちとしても」 恵美は、何となく胸が熱くなってくるのを感じた。 電話を切る。 「何だったの?刑事さん」と母佐由理が聞く。 「明日、結婚式の招待状を持ってきて欲しいって・・・」 「なんだい?筆跡鑑定でもするってかい?」 「そうらしいの」 |
次の日。恵美は招待状を持って警察署に行った。署には白石刑事もいた。 「へえ、これが神田さんの受け取った招待状か・・・」 「何か・・・分かったんですか」 恵美の声に白石は視線を上げた。 「火を見るより明らかだよ。昨日は彩君と、今日は遥子君が持って来てくれたのだが。それを高野さんの遺留品の中にあった招待状を比べたのだが」 白石刑事は3人の招待状を恵美に見せてくれた。その瞬間、恵美はあっと目を見開いた。 「高野さんだけ、筆跡が違う・・・」 「そうなんだ。そこで、この招待状を書いた人物を探すんだが・・・この字に心辺りはないかい」 高野の招待状の筆跡は、他のに比べ柔らかい字の印象だった。他の3通は丁寧だがやや角張った印象だ。白石の話では新郎の字だという。 「座席表も見たけど、問題はなかった」 「高野さんは、招かれざる客だったということですか」 「その可能性が高いな」 という事は、犯人もしくはそれに関連する人物に招かれ殺されたということか・・・。恵美は誰に招かれたのか調べる必要があると感じた。 「先輩は・・・」 「まだ捜索中」 白石の口から疲れの混じったため息がもれた。関係者を何人も調べていたのだろう。その気持ちが恵美にも伝わってくるような気がした。 「先輩と高野さんって人は体格も髪型も似ているよね・・・」 遥子はそう言った。 「何で入れ替わったんだろ」 「それが分かれば良いけど」 似ている。それも重要である気が、恵美はした。 恵美、遥子、みゆきの3人は学校で話をしていた。恵美がビスケットをくわえる。 「高野さんの前に新郎が付き合っていた女性が自殺したんでしょ」 「助かったの?」 「いや、はっきりしたことまでは」 その時。 「おーい、元気か」 男の声。聞き慣れた声だった。 「修之、どうしたの?学校は」 「今日は出席取る授業ないから」 「いいかげんね。厳しい所行ったら」 遥子の手厳しい発言にも修之は動じる気配はなかった。 「そうそう、俺もあの事件知り合いの新聞記者に聞いて、色々調べたら、面白い事実がいくつか出てきたよ」 「本当に?」 そう言いながら、3人の視線は修之の方に向いていた。 「まず、あの結婚の2人だが、1年くらい前に新婦が被害者から略奪するような形となってからの付き合いらしい。もっとも、被害者も2年前にえげつないことしてるらしいけど」 「でも、新郎って何人もの女と交際していたんでしょ」 「まあな。新婦も何人も男いたようだけど、彼女他人のものがよく見えてしまう性格らしい」 それが過去何度もの略奪愛につながっている、とも修之は付け加えた。 「で、新郎の自殺した過去の女なんだが・・・意外な人物とも関係があるんだよ」 「え・・・」 |
「自殺を図ったのは今東京セレクタリーサービスって会社で働いている神崎初江と言う女性らしいんだ」 と修之が言った。 「その人は無事なの?」と瑶子。 「一時入院していたらしい。この事件のあと会社にまた出てきてるってさ」 と修之が言った。 「ね、その人から詳しい話聞けないかな?」とみゆき。 恵美は思った。神崎初江から、詳しい話が聞ければ、 先輩の容疑も晴れるかもしれない、と。 その日の夕方、四人は駅前の喫茶店へ向かった。 「ね、どうやって神崎初江に会うの?」 と瑶子が言った。 「同じ会社に押しかけバイトするしかないわね」 と恵美。 「誰が?」と修之。 「私たち四人でやるのよ」と恵美は言った。 「えっ!私ちょっと朝は苦手で__」と瑶子。 「瑶子は先輩の容疑を――」と恵美が言いかけると、瑶子が慌てて、 「わかった、やるわよ!」と言った。 翌日、四人は東京セレクタリーサービスへ向かった。 |
「今日からここでバイトする者ですが」 と恵美達は次々に言った。 |
4人とも、人手が足りないという事で即採用となった。しかも即日働く事になった。不況の時節、信じられない話であった。 一生懸命働きつつも、神崎初江という人を探し、話を聞きだす。その事に恵美の意識は集中していた。 お昼時。 恵美、みゆき、遥子の3人は食堂で話をしていた。そこへ修之がやってくる。見知らぬ女の人も一緒であった。髪の長い、おとなしめの印象の女性であった。 「修之、その人は?」 「神崎さんだよ」 その名前を聞いた3人は驚きを隠せなかった。修之が外に食べに行こうと促していたので、3人もそれに続いた。 近くのファーストフード店で恵美はハンバーガーを頬ばっている。他の皆の食事も似たようなものであった。 初江は今回の件に関して、別段こだわりはないと言っていた。ちなみに昨日、捜査の刑事も来たと言っていた。 「・・・なんか、あんな人のために自殺なんか図った自分がバカだなって思って」 「そうですか。でも、僕もそう思いますよ」 修之の言葉に恵美達も頷く。 「何か、心当たりみたいなのありますか?」 「そうねえ・・・」 恵美の質問に、初江は考え込んだ。そして、ゆっくりと口を開いた。 「香川さんっていたでしょ。彼女、4か月前に妊娠が発覚して結婚迫ったんだけど、中絶したのよ。私、彼女と同じ大学で・・・」 香川というのは、確か新郎の大学の後輩だと、恵美の記憶にはあった。初江の話は更に続く。 「あまりおおっぴらに出来ないから、東京でない所でやったと思う。丁度、水崎さん、いや2年前に結婚したから桜木さんか・・・、彼女の親せきで京都に住んでいる人がいて、その人の所で1か月くらい過ごしたんじゃないかな」 4人はまさか・・・と思った。遥子が尋ねる。 「その人、京都大学の学生では・・・」 「そう。確か、妹だったと思う。あの人と、香川さんと桜木さんと私、同じ大学の同じ学部で、ゼミも一緒だったから・・・。桜木さんとあの人はサークルも一緒だったこともあったような気がするな・・・」 「その妹さんって、医学部ですか?」 「そう。今のあなた達と同じ位の年じゃないかな」 間違いはなかった。 思いがけない収穫ではあった。 「こんな事聞くのは難ですが・・・、高野さんや花さんのことをどう思われますか」 遥子は失礼を承知で質問をした。しかし、初江は苦笑しながらも答えたくれた。 「あの人がその人達と一緒にいる方が良いと思ったから、そうしたんでしょ。私にとってはあまり関係のないことだと思うけど」 アルバイトの後、4人は修之の学校の図書館に集まっていた。 「こうなったら彩にも聞くしかないわね」 恵美はそう言った。しかし、修之がこう言う。 「今さっき、電話したら明日京都に帰るって言ってた。一応、それだけでなく香川という人の周辺を洗ってみた方が良いぞ」 その大学は修之の大学から電車で3駅程の所にある。今からなら、夜学もあるので学校内には入れる可能性はあると修之は言った。 |
四人は修之の大学へ。 しかし、そこで四人は第二の犠牲者を観ることになるのだった。 |
ドサッ 恵美の足元に何かが落ちてきた。 「何よこれ。」 恵美は懐中電灯でそれを照らした。 それは新 郎男の血だらけの死体だった。 「きゃー!」 「いやー!」 「わー!」 「きゃー!」 |
「寄りによってまた君たち?」 と白石がため息をついた。 |
白石は捜査の指示のため、現場に戻っていった。 「あいつ、犯人だと思ったんだけどなあ」 遥子がそう言った。 「少なくとも、2人、でも先輩も含めると3人か・・・に恨みがある人物だから、かなり絞れるよ」 みゆきはそう言う。恵美も正直、犯人だと思っていた男が死んでしまったことで、やや動揺している。 修之は冷静だった。 「ただ、その先輩が生きているか・・・」 ちらりと恵美を見つめて、更に言葉を続ける。 「死んでいるかで、容疑者の顔ぶれも違ってくるはずだ」 そういえば・・・その可能性についても吟味すべきであった。おそらく白石も同じ事を考えているのだろう。 「先輩が・・・」 恵美も分かってはいつつも、気持ち的に納得出来なかった。そんな恵美に視線をやり、修之が口を開く。 「明日、時間はあるか?あとお金も」 他の3人はその言葉の意味を図りかねた。修之は説明を加える。 「京都に行くんだよ。朝一番の新幹線で」 「それってまさか・・・」 「彩を尾行する。どうも周りの刑事達の雑談に耳を傾けていたら、白石さん、明日京都に出張らしいぜ」 ということは、白石も同じ事を考えているということか・・・。修之は続けた。 「少なくとも、白石さんは犯人は彩と接触すると見ているようだな」 「彩は犯人を・・・」 「知っているか、かなりの確立で見当をつけているか、その程度は確実だな。下手したら・・・」 さすがに修之もそれ以上は言わなかった。 「もしかしたら、犯人捕まえられる?先輩は見つかる?」 「可能性はあるよ」 恵美の質問に、修之は笑って答えた。 次の日。4人は東京駅のホームにいた。切符は今日自由席買った。時期的に良かったのか何とか買えた。4人と50メートル離れた所に彩がいた。4人がいることには気づいていない。 その時。 「学校はどうしたんだ」 振り向くと、そこには白石刑事が立っていた。 「いやー、今日は全部休講で。で、金閣寺でも見ようと思って」 修之がおどける。 「嘘つけ。まあ、良いか」 「白石さんは・・・」 「目的は一緒だよ。もしかしたら、次の標的は彼女かもしれないなということで」 「ひょっとして犯人も・・・」 「乗っているかもな」 白石はそう言った。 丁度、その時、新幹線が到着する旨のアナウンスが入った。向こうを見て見ると、彩も新幹線に乗り込んだようだった。 白石も恵美達と一緒の所の席に座った。同じ車両の離れた所に、彩が座っている。 「白石さんは、先輩を犯人と見ているんですか?」 「神田さんもはっきり聞くねえ。難しい立場であるのは間違いないな」 「そうですよね・・・」 「無実を証明し、無事帰ってきて欲しい気持ちは分かるよ」 |
恵美達は、駅のホームから綾の自宅へ電話をかけた。 |
しかし、何も応答はなかった。 「お前、かかる訳ないだろ」 「いや・・・誰か留守番でもしていないかと思って」 恵美もそう言いつつも、慌てて新幹線に乗り込んだ。 白石はノートパソコンと何枚もの写真を取り出していた。その中には結婚式の写真の他、参加者などの過去の写真もあった。 「これ、式の時のよね」 「何か悲しいね、こういう写真」 みゆきの発言に遥子が同調する。恵美は別の写真に気がついた。 「この人、こういう趣味あったんだ」 その写真は、ある人物が弓道の格好している写真だった。白石がそれに答える。 「確か、この人の家に行ったら賞状たくさん飾られていたな。別に何も怪しい感じではなかったし」 「それって・・・」 恵美は何かひらめいた気がした。修之は発車してから、ずっと席を外している。 確か、式場で殺人に使われたのはボウガンであった。弓に詳しい人間なら・・・。 彩は携帯で電話していた。声がシーズンオフのがらんとした車両に聞こえてくる。 「今、どこにいるの」 「あ、そうか。じゃ、昼は空いているわね」 「私だってね、話を聞きたいわよ。こんなに迷惑被っているんだから」 彩の声は口調と同じ位はっきりしているので、離れた所にいる恵美達にも聞こえた。誰かと待ち合わせの約束でもしているらしい。 しかし、その「誰か」は話の内容を聞いていても分からなかった。彩も名前を口にしなかった。 「もうすぐ京都だよ」 白石がそう言うと、遥子はこう答える。 「修之、戻ってこないんだけど」 「何、考えているんだ」 その時、修之が隣の車両から戻ってきた。 「ただいま、今、向こうの車両で事件関係者見かけたんだ」 「何だって」 修之の言葉に皆驚きを隠せない。話は更に続く。 「いや、その人がさ何で京都行きの券を持って、この新幹線に乗っているんだろって思ってさ。だって、理由がないしさ。実家も違うし、親せきがいる訳でもないし・・・」 修之は「その人」の名を口にした。 それは何と、先程恵美が見た、弓道姿の写真の人物であった。 「あとさ、携帯で電話していたな。誰かと待ち合わせしているらしい」 その瞬間、全員の顔が強張った。 白石は携帯で署の方に連絡した。「その人物」の経歴、人間関係、何かトラブルに最近巻き込まれていないかなど、再度洗いなおせと言った。 「あと、京都府警にも連絡してくれ」 京都駅に着くと、5人はホームに降りた。 「待ち合わせ場所って、どこだろ」 「まあ、範囲は限定されるよな。学校、行くらしいし」 みゆきの疑問に修之がそう言う。修之は昨日電話で色々聞きだしていたらしい。 「そうか、ということは、学校の近くよね」 「学校の外、もしかしたら中かも」 「案外、分からないからな。どさくさに紛れて入るの楽だし」 「・・・修之の大学にも入れたもんね、私たちでも」 「何か事件があるならともかく、一人一人チェックするようなことは、事実上出来ないだろ」 恵美達は二手に分かれる事にした。一組は彩の尾行、もう一組は「ある人物」の尾行をすることにした。お互い、何かあったら連絡することを約束して分かれた。 恵美、遥子そして白石刑事は、「ある人物」の尾行をしていた。 「でも、あの人、犯人なのかなあ」 恵美達は喫茶店で紅茶をすすっていた。「ある人物」も今朝食を取っている。向こうはこちらに気づいていない。 「修之達は大学の中に入ったんじゃないかな」 「そうかな。一旦、アパートに戻ってからだと思うけど」 その時、白石刑事の携帯が鳴った。 「あ、こちら白石だけど。何、それ本当か、間違いないな、ありがとう」 相手は署の人らしかった。そして間を置かずして、恵美の携帯が鳴った。 「もしもし・・・」 相手は、彩を尾行しているはずの修之であった。どうも興奮しているらしい。電話を通していても、それが伝わる。 「それがさ、すごいことがあったんだよ」 「だから、何・・・」 「花先輩、生きていたんだよ」 |
恵美たちは人物の跡を足早に追っていった。 |
12時30分頃。細い道に入った、路地裏。ここは人目にあまりつかない所だ。 彩は待ち合わせをしていた。その相手がなかなか現れず、時計を見ていらいらしている。午後にも授業があることを考えれば、当然の気持ちとも言える。 しかし、彼女は気がつかなかった。その待ち合わせの相手が、すぐ近くにいるということに。そして、その右手には果物ナイフが握られていたことに。 更に10分経過した。 「自分が時間と場所指定してきたくせに、何で遅れてくるのよ。あー、もうばかみたい。帰ろ帰ろ」 そう言って、彩は学校の方に足を向けようとした。 その時だった。 ドスッ! 鈍い音が彩のすぐ側から聞こえた。振り向くと、左肩にナイフが刺さっていた。そこからはどす黒い血が流れ始めている。 「最初から、このつもりだったのね・・・」 刺した人物を睨み付けた。しかし、体に力が入らなかった。また刺される、その恐怖が彼女を襲った。 「彩ーーーー!」 男の声と女の声が複数重なり合っていた。記憶にある声だ。足音もばたばたと聞こえる。 そのなかには恵美、みゆき、遥子、修之、行方不明だった花先輩そして白石刑事も含まれていた。また、現地の警官達も多数駆けつける。 その人物は慌てて逃げようとしたが、包囲した警官に押さえ込まれる。カチャ、と手錠の音が聞こえた。 「香川 愛、殺人未遂の現行犯で逮捕する」 白石刑事は更にこう付け加えた。 「共犯の神埼初江も自供したとの連絡が入ったよ」 白石刑事ら警察は愛を連行して行った。恵美達は、救急車で病院に運ばれる彩に同行した。 その後。 亡くなった新郎の葬式があった。喪主は新郎の父がやっていた。しかし、新郎の生前の行動を表してか、義理での出席が大半であった。なかには怪我した彩はともかくとして、新郎と同じ大学にいたのに彩の姉のように葬式に一切顔を出さなかった人も多い。 出席者の口からも、被害者より加害者に同情する意見が数多く聞かれた。 恵美達も一応焼香をしていた。それが終わったあと、公園のベンチに座って缶のお茶を飲んでいた。 「あの二人、最初は先輩を狙っていたらしい。でも、それを察知した先輩が彩に協力を頼んで、高野って女性に結婚衣裳を着せさせたらしい。浮気相手らしかったからね」 「じゃ、青いドレス着ていたのは・・・途中から先輩だったわけ!?」 「そう。式が始まる前に消えていたらしいけど。女って、化粧するとかなり変わるだろ」 「あの女の人、写真でも派手な感じがしたもんね」 遥子が納得する。 「あと、彩の姉貴、出席に丸して出しておきながら出席していなかったらしい。で、代理で出たのが神埼初江。彼女の所には招待状なかったらしい。で、高野って女性の招待状を出したのは、先輩か彩らしい」 「普通、気づくよね」 恵美の意見は当然と言える。 「大掛りだったからね、式が。少し、変でも分からないよ。実際、僕も気づいたの、結婚式の写真見てからだから」 そう、白石の写真の中の一枚に出席していないと思われていた、神崎が写っていたのだ。確か、何百人単位の式だった。恵美も知らない人間の方がはるかに多かった。 「新郎の方は、二人で学校に呼び出して殺したんでしょ」 「あれは、私たちにもう突っ込むな、としたかったんだね」 「今から考えるとそうだね」 恵美、みゆき、遥子は口々に感想を述べた。 「あーあ、もう事件に巻き込まれるのはこりごり」 恵美がそう愚痴をこぼすと、修之はこう言った。 「本当か?京都まで尾行したくせに」 「あれは、先輩の・・・」 「まあ、事件に巻き込まれるのは最後にしたいよね」 「また、あったらどうする?」 みゆきの結論に遥子が嫌な予言をした。恵美は思い切り背中を伸ばして、澄み切った空を見上げた。 E N D (コメント) 何か長い話になってしまいましたね。何とか終わらせた感じです。 正直、推理もので5話完結となると、第1話か遅くとも2話までには事件が起こってないと、5話完結は難しい気がします。4話で第1の事件が起きても、1話でまとめるのは無理やりになるかも。どのくらいの話なら、5話完結できるかなあ。 |