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きょうのコラム「時鐘」 2009年5月2日
八十八夜、茶摘みが始まるころである。静岡や宇治茶が有名だが、九州の八女(やめ)茶もおいしい
八女は福岡県筑後平野の温暖な土地で、山間に黒木町という小さな町がある。北陸にはなじみがないが、宝塚出身の美人女優黒木瞳さんの故郷で、芸名の名付け親が同じ福岡県出身の作家五木寛之さんと聞けば親しみもわく 先ごろ輪島市黒島地区と黒木町の家並みが、同時に国の伝統的建造物群(伝建地区)に選定されたのも記憶に新しい。明治期の新聞人で文芸評論家の石橋忍月(にんげつ)が生まれた町でもある。富山の北陸民報から創刊間もない北國新聞の編集顧問になった人で出生地に石橋忍月文学資料館がある 茶畑に囲まれた文学館を訪れたことがある。町の生んだ二大著名人として、きれいな黒木さんと髭の忍月の写真が仲良く並んでいるのもほほえましく、金沢で忘れられた忍月の足跡が、詳細に伝わっていたのにも感心した。古里はありがたいものである 帰る間際、案内してくれた老郷土史家が「ちょっと待って」と、摘みたてのお茶を取りに走った。新茶の香りとともによみがえる初夏の思い出である。 |