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量子受信機の原理を世界で初めて検証
【IT】発信:2008/12/02(火) 16:43:33
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〜従来の光通信の性能限界超える〜
情報通信研究機構(NICT)は、ドイツのエアランゲン大学およびデンマークのデンマーク工科大学と共同して、現在の光通信技術の性能限界を超える低誤り率での信号検出が可能な量子受信機の原理を、世界で初めて実証した。量子受信機は、現在の光通信理論に基づく受信機ではできない深宇宙通信や超大容量通信を可能にする、量子通信に必須な基本技術。開発した受信機は、内部に市販の光子検出器を組み込んだプロトタイプなため、今後は最先端の光子検出技術を採用して、世界に先駆けた量子受信機の実現を目指す。同成果は、米国物理学誌『Physical Review Letters』の11月21日号に掲載された。
NICTでは独自の理論研究を進め、現在の光技術でも十分に実現可能な、新しい量子受信機の方式を提案した。共同研究では、その原理が正しいことを実験で検証した。
従来のコヒーレント通信の受信方式では、光の波の性質である干渉を使って、信号の位相と振幅を測定している。しかし、量子雑音の影響をできる限り除去するには、光の波動性だけでなく量子性、つまり光子としての性質も最大限に活用する必要がある。量子受信機では、光を適切に干渉させた後に、光子検出器で光子を直接検出することでそれを実現しいる。
今回のNICTなどの研究では、干渉に用いる外部参照レーザーのパラメーターを量子力学的に最適化することで、既存の研究に比べ装置を劇的に簡略化することに成功した。実験では、平均光子数が1光子以下の極めて弱い2値位相変調(BPSK)信号に対し、光子検出器の量子効率を補正した条件で、コヒーレント通信の理論限界を超える低誤り率での信号検出を、世界で初めて実証した。
大容量通信が可能な光波長多重通信方式において、多重化信号のトータルの光電力がファイバーの限界に達してしまうと、さらなる大容量化のためには各信号を超微弱光にする必要が生じる。また、惑星間レベルにおける超長距離の宇宙通信では、信号が宇宙で拡散してしまうので、やはり超微弱光しか受信できない。 そのため、これら極限的な通信状況では、光子1数個程度の極端に微弱な信号から最大限の情報を取り出す受信機の開発が重要課題となる。
現在、最高の受信感度を実現できるのはコヒーレント通信という方式だが、光子レベルの超微弱光では、光の量子雑音の影響が顕著になり、この方式の受信機でさえ低誤り率の信号検出は不可能である。
一方で量子物理学の理論として、この限界が原理的に超えられることが予言されており、それを実現する有力候補が量子受信機である。ところが、従来の量子受信機の提案では技術的難易度が極めて高く、研究開発はあまり進んでいなかった。 (科学、11月21日号1面)
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