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半導体超微粒子に孔を開ける加工法を開発
【ナノテク】発信:2008/06/25(水) 10:50:46
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半導体超微粒子はレーザーなどの光を発生したり、また触媒として様々な物質の反応を制御する新しい材料として注目されている。こうした性質は超微粒子の全体積に対する表面積の割合に直接関係しており、表面積が多い方が性能は高くなる。中に孔が空くと、通常の超微粒子よりも表面積の割合が極端に増えて、性能が改善される。神戸大学工学研究科の保田英洋教授と阪大超高圧電子顕微鏡センターの森博太郎教授らの研究グループは、化合物の半導体の超微粒子の中に小さな孔を開ける方法の開発に成功した。
ガリウムとアンチモンの化合物からなる直径10〜20nm(nmは10億分の1m)程度の超微粒子に、透過型電子顕微鏡の中で電子顕微鏡としては極めて低い2万5000電子ボルトのエネルギーの電子ビームをあてたところ、微粒子の内部に、微粒子よりも一回り小さい孔(空洞)が空き、微粒子の直径は十数%程度大きくなった。粒子の大きさが5nm以下になると、孔は空かなかった。
保田教授によると「透過電子顕微鏡(TEM)の電子ビームで固体内電子を励起して構造を変化させる手法について研究を行ってきた。構成原子数が少ない超微粒子では原子が動きやすく、その励起効率をあげるために電子ビームのエネルギーをTEM観察では常識外の2万5000電子ボルトにまで下げて観察実験を行ったところ、原子空孔(欠陥)が大量に形成されて集合体をつくり孔が開いた」とという。
半導体は極めて低いエネルギーの電子をあてることで大量の原子空孔(空になった格子点)が作り出される。超微粒子のような超ミクロの物質では原子や原子空孔が動きやすい状態になっており、球形の超微粒子の中では原子空孔が孤立して散らばるよりも、これらが集合して1つに合体した空洞(ボイド)になる方が安定になるため、こうしたことが可能になった。
保田教授の話「この成果は、高性能の発光材料や触媒に応用できる可能性がある。今後、トップダウンとボトムアッププロセスを組み合わせた手法、すなわち、トップダウンによる配位制御に立脚した超微粒子の自己組織化による原子操作プロセスにボトムアップによる超微粒子を構成要素としたナノ構造創製プロセスを組み合わせた手法の実現に向けてナノテクノロジー研究を展開していきたい」
この成果は、米国物理学会のフィジカル・レビュー・レターズ誌(3月14日付)に掲載された。(科学、6月13日号4面)
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