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ナノチューブの中でナノ物質合成に成功
【ナノテク】発信:2008/08/22(金) 14:41:31
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名古屋大学の北浦良・助教、篠原久典・教授らは、高輝度光科学研究センター、産業技術総合研究所と共同で、カーボンナノチューブを反応炉に、ナノワイヤーを創製する方法を開発した。この方法を使って、90%以上の効率で塩化エルビウムのナノワイヤーを作り出すことに成功した。独科学誌NanoResearchオンライン版に掲載された。
原始数個の太さしかないナノワイヤーは、特異な性質を持っているため、量子伝導や電子相関に関する基礎研究、FETチャネルや配線、高感度センサー、レーザー発振などの様々な応用への展開が期待されている。しかし、これまでのナノワイヤーはSTMを使って原子を一つずつ並べるといった非効率な作り方しかなかったため、応用への展開ができなかった。
研究チームは、ナノチューブが熱的・化学的に極めて安定であり、0.4〜50nm位までの幅広いサイズがあることから、ナノワイヤー作製のための反応炉として注目。
まず、改良直噴熱分解合成法を用いて、極めて純度・品質の高いカーボンナノチューブを合成。次に石英管の中に塩化エルビウムとナノチューブを入れ、石英ウールで蓋をしてから300度Cで1時間熱し、不純物を取り除きながら、高真空状態で石英管を閉じる。その石英管を電気炉に入れ、700度Cで7日間かけて反応させる。北浦助教によると、この時に塩化エルビウムが溶け出して、ナノチューブの中に入っていくのだという。
できあがったナノチューブの構造解析をしたところ、4配位と6配位の塩化エルビウムが結合したナノワイヤーと4配位と5配位が結合したものが、1本ずつ形成されていることが分かった。塩化エルビウムは結晶では6配位、水和物では8配位をとり、4配位や5配位は通常ではあり得ない。北浦助教は「狭いナノチューブの中で結晶化する際、自然とこういう形になったと思われる。今後、解析を進めることで新たな機能が見つかるかもしれない」という。
また形成効率は90%で「ナノチューブがより高品位になれば、100%に近づく(北浦)」という。
さらに研究グループは、2臭化ニッケルでもナノワイヤーを作り出すことに成功しており、今回のナノワイヤー形成法は、物質科学の新たな地平線を切りひらくことになる。(科学、8月8日号1面)
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