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SQUIDで100兆分の1mの振動を観測
【ナノテク】発信:2008/09/25(木) 12:01:37
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〜巨視的物体の量子現象観測に一歩近づく〜
NTTの物性科学基礎研究所は、原子核の大きさに相当する約100兆分の1mという超微細な振動を検出することに成功した。高感度な磁気検出素子として知られるSQUID(超伝導量子干渉素子)の一部を、マイクロマシンの板バネに加工して実現した。
超高性能な検査装置や量子コンピューターなどへの工学応用が可能で、さらに2桁精度をアップすれば、トンネル効果など巨視的な物体に対する量子現象の観測に応用できると、同研究所の山口浩司・量子電子物性研究部長(東北大客員教授)は話している。この研究はオランダのデルフト工科大学と連携して実施したもので、文科省科研費の助成を受けている。成果は英科学誌ネイチャー・フィジックス電子版(8月31日)に掲載された。
今回の同研究所の成功は、物の振動を電気信号に変換する素子を用いて実現した。この原理は、レコード針(板バネ)の振動を磁石に伝え、磁束を変化させてコイルの中に電流を流し、それを電気信号として出力するレコードカートリッジなどに使われているものと同じで、「コイルを貫く磁束数の変化により、振動を電気信号に変換して出力する原理」であり、それを究極まで突き詰めることで、超微細な板バネの振動の検出を達成した。
具体的には、磁気検出素子であるSQUIDの一部を、長さ50μm(ミクロン=100万分の1m)、幅4μm、厚さ0.5μmの微小な板バネに加工し、その板バネが振動する際の回路面積の変化を、磁束数の変化、さらに最終的に抵抗値の変化として検出した。板バネの材料にはアルミニウム・ガリウム・アンチモンを用いた。
超微細な振動、つまりごく僅かな磁束数の変化を捉えるための工夫として、ニオブ材料のこのSQUIDの一部に、抵抗となる半導体(インジウム・ヒ素)を組み込んだ。そのSQUIDの回路に電流を流すと、超伝導状態なので最初は電圧は0であるが、ある電流の臨界値に達すると組み込んだ半導体が抵抗として働くようになり電圧が発生する。この臨界電流付近は回路を貫く磁束数の変化に超敏感な状態となっている。
この敏感な状態を利用して、絶対温度0.1度の極低温状態における板バネの、超微細な振動を磁束数の変化で捉えて検出した。測定可能な振動の大きさを計算すると、約10フェムトメートル(100兆分の1m)となった。この大きさは原子核の大きさに相当する超微細なものである。
「今回の成果では、トンネル効果や不確定性原理など、巨視的な物体に対する量子現象を観測するために必要な感度の36倍という小さな振動を検出できた。今後は、さらに感度を100倍上げる開発を進め、そうした観測の実現を目指したい。またSQUIDにはより高温の液体窒素で超伝導動作する素子もあり、そうした素子を使って分子やイオンの微量分析などを行う高感度検査装置に応用できる可能がある」と、山口部長は展望している。(科学、9月12日号1面)
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