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フラーレン‐コバルト薄膜、巨大な磁気抵抗効果の起源
【ナノテク】発信:2009/02/17(火) 13:58:09
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日本原子力研究開発機構(原子力機構)、分子科学研究所、東北大学、東京大学の研究グループは、放射光を用いたX線磁気円偏光二色性分光により”フラーレン(C60)‐コバルト(Co)薄膜”を分析。薄膜中のC60‐Co化合物が、化合物に局在する電子のスピンによる磁性をを示すことを発見した。しかも、この局在スピンがCoナノ粒子間を移動する電子のスピン偏極率を著しく増大させることが、巨大トンネル磁気抵抗(TMR)効果の起源であることを突き止めることに成功した。
通常Co結晶の電子のスピン偏極から予想される磁気抵抗率は14%程度。同グループが真空中で基板状にC60とCoを徐々に積層させて作ったC60‐Co化合物の薄膜では、90%に達した。原子力機構先端基礎研究センター極限環境場物質探索グループの松本吉弘博士研究員によると「ほぼ100%に近い磁気抵抗率が得られたことは、薄膜に磁場をかけたときに電流が流れ、かけないときには全く流れないことを意味しています。デバイスでいえば0.1信号に相当するものです」という。
また、なぜこのようなことが起きたのかにについては、放射光を試料に照射し、X線の吸収量を測定した。磁場の方向を変えることによって物質中のスピンの大きさによってX線吸収強度に差が生まれることがわかった。こうした結果から「C60‐Co化合物に局在するスピンが、Coのナノ粒子間に流れる電子のスピンを大きく偏らせることで、大きな磁気抵抗効果を起こしているのではないか」としている。
この研究成果は、分子スピントロニクス材料の特性制御や機能設計の指針となるものとして注目される。「フラーレン化合物のスピンが重要であることがわかったことから、何とか室温で100%のTMR効果の実現を目指していきたい。そのためにはCo以外の遷移金属、ニッケルやマンガンなどで試していきたい」(科学、2月6日号1面)
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