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微生物の力を利用、白金族元素ナノ粒子作製
【ナノテク】発信:2009/03/09(月) 15:14:54
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日本原子力研究開発機構先端基礎研究センターの鈴木義規博士研究員、大貫敏彦研究主席らと名古屋大学エコトピア科学研究所の榎田洋一教授らの研究グループは、微生物(鉄還元菌)を用いて白金族元素ナノ粒子を作製することに成功した。しかもこの材料を水素と重水素の同位体交換の触媒として用いると、最大で従来比で6倍もの高い有効性を示すことを世界で初めて明らかにした。大貫研究主席によると「白金族金属は、燃料電池、NOx除去、同位体交換などの触媒能に優れ、都市鉱山(携帯電話やOA機器等に使われる)にも含まれる希少かつ高価なものです。今後は、都市鉱山からの白金族元素回収への応用や触媒としての実用化を企業などとの共同により進めていくことも視野に入れていれています」という。
触媒能に優れる白金族元素(白金を含むルテニウム、パラジウムなど6元素)は、電気化学反応による燃料電池、光化学スモッグや酸性雨などの原因物質であるNOxの除去、同位体交換などの触媒として幅広く使用されているが、白金族元素は希少かつ高価だけに、少量で表面積を大きく利用できるナノ粒子化が不可欠とされている。同研究グループは、特定の微生物が超ウラン元素(TRU)などと結合する性質に着目。鉄還元菌を白金酸溶液とパラジウム酸溶液に添加したところ、鉄還元菌の細胞表面にナノスケール(1_bの一万分の一以下)の白金族粒子が生成したという。この微生物を用いる白金族元素ナノ粒子の生成は、従来の工学手法とは全く異なる新規のバイオ手法である。
さらに、珪藻土に”微生物細胞−白金族元素ナノ粒子”を保持させて、水素と重水素(D2)の同位体交換(H2+D2→2HD)の材料としたところ、白金粒子単体と比較して約6倍の効率で交換できるなど、優れた触媒能を示した。
今後、微生物を用いるバイオ手法により経済的で環境に優しい白金族元素ナノ粒子触媒作製法の開発につながるものと期待される。さらに、鉄還元菌は今回発見した機能以外にもウランを鉱物化するなどの機能をもっている。また、酵母など他の種類の微生物も優れた機能を備えている可能性があるだけに、同グループでは、微生物の新たな機能の発見と、その機構を解明していき、新たなバイオ手法を提案していきたいとしている。(科学、2月27日号1面)
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