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単層カーボンナノチューブ金属型と半導体型を簡単に分離
【ナノテク】発信:2009/04/02(木) 15:07:13
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〜大量生産法実現へ期待〜
産総研ナノテクノロジー研究部門自己組織エレクトロニクスグループの片浦弘道・研究グループ長、田中丈士・研究員は、アガロースゲルを用いて、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を金属型と半導体型に分離する、非常に簡便な方法を開発した。産総研が開発したアガロースゲル電気永動による分離法をさらに簡便化したもので、これまでなかった大量分離精製法の実現へ期待できる技術だ。産総研では今後、企業等と協力して大型化と低コスト化を進め、金属型SWCNTと半導体型SWCNTの大量生産実現に向けた研究を進める。
SWCNTは、炭素原子の並び方により金属的な性質のものと、半導体的な性質のものが存在する。金属型は希少金属を用いた透明導電材料の代替品として、液晶ディスプレイや太陽電池パネル用透明電極に、また半導体型は透明で折り曲げられるフレキシブルトランジスター等への利用が期待される。
しかし、SWCNTを合成すると、通常はこれら金属型と半導体型が混じった混合物として合成される。そのためこれらを電子材料へ応用するには、混合物を金属型SWCNTと半導体型SWCNTに分離する必要がある。ところが、これまでその分離は容易ではなかった。
この分離技術について、産総研ではアガロースゲル電気泳動法により、金属型と半導体型のSWCNTを高い回収率で分離できる方法を開発し、昨年2月に公表した。今回は、この分離法を大幅に簡略化する方法を開発した。
まず、アガロースゲル電気泳動による金属型・半導体型SWCNTの分離メカニズムの解明と、よりシンプルな分離法の開発を目的に、電場を利用しない分離法を試みた。SWCNT含有ゲルを直接遠心分離にかけると、ゲルが押しつぶされて、ゲル中の溶液成分が搾り出された。その結果、金属型を含む溶液と半導体型を含むゲル固形分に分離され、アガロースゲルを用いた分離において、電場泳動は必須ではないことが分かった。回収率はゲル電気泳動法と同様に、ほぼ100%であった。
さらに、ゲルの固形分と溶液部分とを分離する方法として、凍結〜解凍〜圧搾の手段を適用した。「高野豆腐」の製造で、凍結〜解凍により豆腐のゲル構造を変化させて水分を取り除く手法があるが、これを応用したものである。
SWCNT含有ゲルをそのまま圧搾しても、ゲルが崩れるだけだが、凍結〜解凍の後に指で搾るだけで、ゲル遠心分離法と同様に、金属型を含む溶液と半導体型を含むゲル固形分が容易に分離できた。この分離法は特別な機器を必要としないのが特徴で、家庭用の冷凍庫程度の設備で足りる。
ゲル残渣中に存在する半導体型SWCNTは、加熱してゲルを溶かした後に軽く遠心分離すれば、簡単にゲルを取り除ける。この分離方法は異なる直径のSWCNTでも有効であった。
産総研では、現在のところ分離のメカニズムについて、半導体型SWCNTが選択的にアガロースゲルに吸着するためであるとしている。また、今回開発した分離法は非常にシンプルであり、分離工程の自動化や大型化が容易だとしており、例えば、連続自動分離装置を用いて単純にスケールアップすると、計算上は、1日当たりkgオーダーのSWCNTが分離できるという。(科学、3月20日号7面)
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