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立体的な金属を自在に、ナノサイズ精度で形成
【ナノテク】発信:2009/03/10(火) 17:08:14
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理化学研究所基幹研究所の田中拓男・准主任研究員、武安伸幸・協力研究員らは、赤外レーザーの2光子還元法と、界面活性剤のNDSS(n-Decanoylsarcosine Sodium Salt)を使って、ナノメートルサイズの立体的な金属を自在に創り出す技術の開発に成功した。金属の3次元微細加工技術におけるブレークスルーだ。
金や銀といった貴金属をナノメートルサイズの微粒子にして光を照射すると、金属表面の自由電子が光の電場によって振動を起こし、表面プラズモンが起こる。すると金属の表面近傍には強い電磁場、つまり明るい光が生成される。この明るい光は、新たな超高感度の化学センサーや、高効率の太陽電池などに応用できる。さらに、この金属の微粒子を、ナノメートルサイズの微細構造を持った立体構造に加工して、表面プラズモンを発生させると、加工した立体構造は、あたかも新規な光学特性を持つ物質のように振る舞う。こうした人工物質はメタマテリアルと呼ばれる。
研究グループではこれまで、この物質を使って、通常の物質では正の値しか取り得ない屈折率を負の値にしたり、物質の境界を越えて、光を自在に透過できる光学素子を作り出すことに成功している。現在、表面プラズモンを利用した光技術分野のプラズモニクスは、メタマテリアルと併せて世界中で活発に研究されている。この分野の大きな課題が、現在の微細加工技術では、金属の3次元的な微細構造を作り出せないことにあった。
今回、研究グループは、ナノメートルサイズの分解能で、立体的な金属構造を自在に作製可能にする、まったく新しい加工技術を開発した。
金属のイオンを含んだ水溶液や樹脂に赤外フェムト秒レーザーをあて、金属イオンを光で還元して金属化させる2光子還元法を開発し、また形成条件を最適化することで、あたかも鉛筆で空間に絵を描くように金属構造を生成することに成功した。しかし、このままではごつごつしたマイクロメートルサイズの構造しか生成できないため、金属イオンとは反応せず生成した金属微粒子とのみ反応する界面活性剤NDSSを溶媒に添加することで、約10ナノメートルサイズにまで極微細化することができるようになった。
実際、波長800ナノメートルの近赤外レーザー光を使用して、その回折限界を超えた、120ナノメートルの線幅の銀の細線を作製することや、ガラス基板上に線幅約180ナノメートルの銀線を垂直に立てたり、銀のピラミッド構造を作製したりすることにも成功した。
ナノメートルサイズで、立体的な金属構造を形成できる技術は、プラズモニクスやメタマテリアル分野の研究に飛躍的な進歩をもたらす。今後、表面プラズモンが作り出す強い光の場は、新たな超高感度の化学・生体センサーや高効率太陽電池、高輝度発光デバイス、ナノb光回路などを可能にすると大きく期待されている。
田中准主任研究員は「現在、3次元構造を持ったプラズモニック・マテリアルを作成しているところです。今回開発した手法によって、これまで理論上でしか考えられなかった新しいデバイスが開発できるようになります」と話す。(科学、2月27日号1面)
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