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3次元フォトニクス結晶、量子ドット発光観測
【ナノテク】発信:2008/11/06(木) 13:25:17
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東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦教授、青木画奈協力研究員(現・イタリア/サレント大学研究員)らの研究グループは、世界最高Q値の3次元フォトニクス結晶に埋め込んだ量子ドットの発光を観測することに初めて成功した。独自手法で作製した結晶に電子・光子を同時に3次元的に閉じこめることが可能になったことで、単一光子発生器や光通信波長帯での極低閾値ナノレーザなどの開発につながると期待される。10月5日(英国時間)のネイチャー・フォトニクス(電子版)に掲載された。
フォトニック結晶は、周期的に屈折率が変化する性質があり、半導体バンド構造と似たフォトニックバンド構造を持つ。光子の振る舞いを操る材料として注目されている。
周期的屈折率分布が3次元的に広がった構造を持っているのが3次元フォトニック結晶で、作製法は非常に難しい。あらゆる方向に進む光を閉じこめることができる構造を持つため、光子の完全な制御が可能だ。既存の光ファイバとの結合も良く、低損失に抑えられることから、光通信の消費電力化も期待できる。一方、量子ドットは電子を閉じこめ単一の波長光を効率よく発光できる粒状の構造。
研究グループでは、走査電子顕微鏡(SEM)で観察しながらガリウム・ヒ素でできた2次元プレートを9層、あるいは17層まで静電気を使って積み重ね3次元フォトニクス結晶を作製した。途中の1層分に1.5μm帯(通信波長帯)で発光するインジウム・ヒ素・アンチモンでできた量子ドットと、特定の周波数の光だけを集める構造(点欠陥共振器)をはさみ、電子と光子を捉える仕組みを構築。この結晶から今回、量子ドットの発光を確認した。
さらに、光子を局所的に長時間閉じこめる共振器の質の指標となるQ値は、これまでの値の10倍となる2300を示し、数ピコ秒以上も光子を共振器の中に閉じこめることが可能になった。
今回、キーとなった半導体の作製法は、材料やパターンの複雑さに依らず、一定の精度を持った3次元微細構造を作ることが可能な事から、化学や製薬、医療分野など幅広い分野での活用が期待される。
将来的には、単一の電子や光子などの振る舞いを完全制御できるようになることから、究極の安全性を持つ量子暗号通信や超高速情報処理が可能な量子コンピュータなどの開発推進につながりそうだ。
荒川教授は「今回の成果は、私が1994年に提案した0次元電子と0次元光子の相互作用を本格的に実現したものであり、大変意義深い。今後、究極の光子・電子融合ナノデバイスに向けた研究開発に弾みがつくことを期待したい」と語る。(科学、10月31日号4面)
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