■ 田中美里さん(女優)の
 - 『冬のソナタ』の話
  
 『冬のソナタ』で主人公チョン・ユジンの吹き替えをやった。実はちゃんとしたドラマの吹き替えは今回が初めてで、「そのドラマがすごく人気になっている」というは不思議な感じ。 
 病院で「あの〜、ミニョンさんのマフラーの巻き方ってどうやるんですか?」なんて聞かれたり。出演したワケじゃないからわからなくて、焦ってしまった。スーパーでも「その時、ユジンはどうしてそうなったの?」と聞かれたこともあった。 
 あのドラマを初めて見て驚かされたのは、犬の鳴き声だった。もの凄くいいシーンで「ワンワン!」という音が入っていたりして、日本のドラマだとちょっと考えられない。「あれ?マイクが画像に入ってたよね?」「映像的に繋がってない……?」みたいなことも気にしないみたい。逆に、ビックリするくらい綺麗な映像もあったけど。 
 映像的に繋がっていないというのは、たとえば、手紙を書いている人がいて、手紙の書き出したばかりのはずなのに、紙にはもの凄い量の文字がすでに書かれている、みたいなこと。最初はそんなところを見つけて楽しんだりもした。 
 セリフも日本とはちょっと違って、詩のような大仰なセリフが多い。「君の瞳はルビーの……」みたいなセリフ、最初はかなり恥ずかしかった。ところが人間、なんでも慣れてしまうもので、だんだんその大げさなセリフが気持ちよくなって、最後は感情移入のあまり泣いてしまうほどになっていた。 
 一番よく憶えているのは「私はゴメンナサイは言いません。ミニョンさんは私の心を奪っていったから」というセリフ。大げさかもしれないけど、恋をしている時につい書いてしまった変な手紙みたいな感じで、どことなく親近感が持てる。 
  
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■ 田代親世さん(フリーアナウンサー)の
 - 『韓国ドラマの裏側』の話
  
 韓国のドラマは週に2回放送される。だから後半はどうしても収録が間に合わなくなって、「今日放送する分は今日に撮る」なんて生放送みたいなことが本当に起こる。だから俳優にとっても過酷な環境で、風邪を引いて倒れても点滴を打って……なんてことがあるらしい。 
 でも、その中から生まれる集中力というかエネルギーというか、日本のドラマとはちょっと違う魅力が生まれている。 
 『冬のソナタ』で主役を演じたチェ・ジウさんは、今は韓国で視聴率40%を誇るドラマに出ている。その現場に取材しに行ったんだけど、当然のようにリハーサルなんてなくて、慌ただしい撮影が続いていた。もの凄く寒いから撮影の合間は毛布にくるまって、本番になるとカメラの前へ飛んでいって、「はい、泣いて!」と言われれば目をウルウルさせる。よくあの状況で泣けるものだ……と感心した。 
 チェ・ジウさんは「集中力がある」と監督から話を聞いてたけど、ギュッと凝縮した中でパーン!と弾ける力が画面にスパークしている、そんな印象を受けた。 
 今の日本のドラマは、コテコテでドラマチックなものがほとんどない。だけど昔はそういうドラマがあったし、けっこうみんな好きだった。それを残念に思っていた人たちの心に、韓国のドラマは火を付けたのでは。「これが見たかった!」みたいな。 
 殺伐とした世の中、どうせドラマを見るなら、ひとときでも夢の世界に浸りたい。一途でひたむきで一生懸命な人たちが描かれ、「人を愛するとはどういうことか」がわかってくる。だから、韓国ドラマを見ていると恋がしたくなる。 
 ただ、さすがにあれは「ドラマの世界」で、韓国の男性がああいう風だということではないみたい。『冬のソナタ』の脚本家に話を聞いたら、雪だるまのファーストキス、というシーンを撮影するときは、監督、俳優陣も「恥ずかしくて鳥肌が……」って言いながら撮影したんだとか。 
 ちなみに『冬のソナタ』のユン・ソクホ監督は、純愛や初恋を描かせたら右に出る者はいないと言われる名監督。映像美にも定評があって、詩情豊かな映像を創るのがとても上手い。このユン・ソクホ監督、実は40代半ばにして、いまだ独身。「自分は愛を信じているから、いつまで経っても独身なのかな〜?」なんて漏らしていた。「愛とは、自分の魂を相手に投げかけるものだと思います」なんて言葉、世の男性に聞かせてやりたい。 
  
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■ 中島久美子さん(フジテレビ)の
 - 『日韓合作ドラマ』の話
  
 日韓合作ドラマ『STAR'S ECHO〜あなたに逢いたくて〜』のプロデューサーを担当した。 
 そもそも日韓合作ドラマは、2002年のW杯の頃に『ソナギ』というドラマを作ったのが最初だった。以前からフジテレビと韓国文化放送というTV局は提携関係を結んでいたけど、あまり仲が良い方ではなかったらしい。それを何とかしようじゃないか、というプロジェクトの一環として、合作ドラマを作るようになった。 
 私は今回が初めてだったんだけど、ドラマ作りのシステムの違いには驚かされた。日本では「1時間の放送」といえば、CMの時間を差し引いて正味50分ちょっと、と決まっている。ところが韓国では「だいたい1時間」という捉え方をする。しかもそれぞれお互いにそれを当たり前と思って話を始めてしまってから、台本の打ち合わせの途中で「何か変だ」と気付いた。「これじゃ2時間に収まらないんじゃ?」「え?収めなくていいじゃん」なんて。 
 撮影現場のスタンスも全然違う。日本では、朝にロケへ出発する時には、何時にどのシーンを撮って、お昼ご飯は何時に食べて、何時に終了する、というスケジュールが細かく決められている。ところが韓国では、出発時間しか決まっていない。朝、ロケバスに乗り込んでから行き先が変わることもあるくらい。 
 ある地方ロケの時は、「ソウルから2時間くらいの春川(チュンチョン)で」と言われていた。まあ2時間くらいなら日本でもよくあるし、と思っていたら、途中で「春川からハジョデ(河趙台?)に変更します」と言う。運転手さんに聞いたら、そこまでは6時間も掛かるらしい。夜のシーンの撮影だったので、そうなったらもうその日の内には帰れない。誰も泊まる準備なんかしてきていないのに、ロケ隊一行はそこら辺のモーテルに泊まることになってしまった。 
 「マネージャーさんとか怒ってないかな……」とビビってたんだけど、その頃には日本人も慣れていて、中越典子ちゃんなんかは「横になって寝れる場所ですか?あ、それなら大丈夫です」って言ってくれるくらい強くなっていた。 
 会社を背負って話をする人たちとはずっとバチバチやりあってたけど、ADさんや美術チームの人たちには本当に気を遣ってもらった。朝から晩まで「お腹空いてない?飲みに行く時間もなくてごめんね」なんて言ってくれて、すごく現場にいることが楽しかった。友達もいっぱいできたし。 
 たしかに日本と違う部分もたくさんあったけど、自分の中の発想を切り替えてしまえば、それもまた楽しかった。できたらまた一緒に仕事をしたい。 
  
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■ 猪野学さん(俳優)の
 - 『韓国ドラマの吹き替え』の話
  
 以前にも、『JSA』という韓国映画の吹き替えをやったことがある。同じ吹き替えでも、洋画だと「ハーイ、スティーブ!」みたいなオーバーアクションで楽なんだけど、韓国映画やドラマだと目や表情で物を言う、という部分の表現が難しい。 
 今回の『冬のソナタ』では、役者全員が集まって、お互いの芝居を見ながらの吹き替えだった。業界でも厳しいと言われる演出家とプロデューサーで、最初の内は非常に緊張感の漂う現場だった。 
 やっぱり「大げさにやると絵にはまらない」し、セリフの量が少ないこともあって、かなり難しかった。ずっと2人で自転車に乗っているような映像が「何分続くんだ?」なんてこともあったり。声も張らずに、マイクに近いところでゆっくりボソボソと喋る、という表現は本当に難しい。 
 僕が吹き替えを担当したのは、田中美里さんが吹き替えた主人公の幼なじみの役。もう1人の主役は萩原聖人さんで、お二人はTVドラマや映画で慣れているのか、すごく自然にその世界に入っていけるようだった。逆に僕みたいに吹き替えに慣れている人間の方が苦労した。ダメ出しもずいぶんあったし。 
 吹き替えたキム・サンヒョク役は、見ていてかなりイライラした。僕はストレートに言ってしまう方なので、「しっかりしろよ!」なんて。でも、役者としてはキム・サンヒョク役のパク・ヨンハさんには「うまいな〜」と感心させられた。いつか会って、苦労話なんか聞いてみたい。 
 なんて言いつつ、いざ会ってみると緊張して、薄い会話で終わっちゃったりするんだけど。 
  
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■ 三原繁美さん(ジャーナリスト)の
 - 『韓国映画事情』の話
  
 東京国際映画祭でも韓国映画は勢いがある。下手をすると、メインのコンペティション映画をしのぐほどの勢い。 
 韓国では映画への注目度が日本と比べて非常に大きい。もちろんTVドラマも大ヒットしているけど、映画も同じくらいのヒットをしている。作り手も観客の意識を考えて映画を作っているから、一方通行の映画にはならない。観客の気持ちがフィードバックされて、そういう姿勢を観客の方もちゃんとわかっている、という良い関係が出来上がっている。 
 映画の料金も日本より安いし、シネコンも大ブレイクしている。ソウルやプサンなどの大都市には「まさにシネコン!」という感じの大規模な映画館が建っている。「プサン国際映画祭」では、メイン会場としてシネコンを使っているほど。 
 アメリカ資本のシネコンもあるけど、どちらかといえば韓国独自のシネコンが主流。そのせいか韓国映画を上映する比率も高くて、だいたい半分近くは韓国映画。もっともこれには事情があって、「スクリーン・クォーター制度」によって韓国国内で上映する映画は「何%まで韓国映画でなければいけない」と決められている。 
 そして日本映画はずっと規則によって入り込めなかったけど、最近はどんどん解禁の方向へ向かっている。今年の1月から、劇場用アニメなどごく一部を除いて、ほぼ全面的に解禁された。 
 W杯の時の様子を見ても、韓国の人はアジアのラテン系。何かがあると一気に盛り上がる。そのため1つのジャンルがブームになると、そのジャンルの映画が大量に作られる傾向があって、「ホラー映画ブーム」「ラブストーリーブーム」「アクションブーム」いろんなものがブームになった。その一方で全然違うジャンルの映画を作る人もいる、という多様性もある。 
 ただ、韓国映画界はビジネス的にすごくシビアで、どんなにお金を掛けた大作であろうと、客の入りが悪ければ2週間で打ち切られるのが当たり前。『シュリ』でもおなじみ、韓国を代表するマネー・メイキング・スターのハン・ソッキュという男優が主演した『二重スパイ』ですら、2週間で打ち切られた。 
 そのハン・ソッキュの後に韓国でNo.1のマネー・メイキング・スターと呼ばれるようになったのは、『JSA』でも主演したソン・ガンホ。いわゆる2枚目タイプじゃなくて、ユーモラスな感じの男優で、彼が出演する映画は日本でも注目を集めると思う。 
  
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■ チャン・トンヨプさん(コリア・エンタテインメント・ジャーナル編集長)の
 - 『韓国の音楽業界事情』の話
  
 日本ではCDの発売日があらかじめ告知されて、ファンはその日を心待ちにしているけど、韓国ではそういう発売日の告知は行われない。 
 5本の指に入るくらい売れている人なら、ある程度は告知されて、ちゃんとその時期に店頭に並ぶ。でもそれ以外の人は、最初はサンプルCDしか作らない。それをプロモーションで流したり、ファンクラブの人に聞いてもらったり、メディアで流してもらう。その反応が良ければ初めて生産する。 
 ただ、さすがに最近は日本のCDも売られるようになり、インターネットなどでも検索できるようになって、発売日を決めて売るように少しずつ変わりつつある。ただ、ダンス系の音楽が流行るとダンス音楽一色になるし、ポップ系が流行ればポップ一色。「自分の好みで選ぶ」という環境が、まだ韓国にはない。 
 韓国ではCDに定価制がないので、お店によって値段が違うけど、おおよそ日本円にして1200〜1500円くらいで売られている。ただ、これも定価制にしようという動きがある。 
 アルバムはだいたい14曲入りで、シングルはほとんどない。だからチャートもアルバムだけ。この辺の事情も日本とはかなり異なる。 
  
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放送曲目リスト
 
| Time | 
Title | 
Artist | 
Label | 
Number | 
 
| 8'56" | 
I'm All Smiles | 
Nancy Wilson | 
Capitol | 
0777 7 80409 2 7 | 
 
| 18'14" | 
Be Careful It's My Heart | 
John Pizzarelli | 
TELAEC | 
CD-83546 | 
 
| 24'33" | 
My Kind Of Love | 
Patti Page | 
Mercury | 
UCCM-90 | 
 
| 32'11" | 
Speak Low | 
Cybill Shepherd | 
TWI | 
470-2 | 
 
| 39'11" | 
Almost Like Being In Love | 
Nat King Cole | 
Capitol | 
CDP 7 46650 2 | 
 
| 47'00" | 
Show Me The Way To Get Out Of This World | 
The Four Freshmen | 
Capitol | 
CCM-095-2 | 
 
 
 |