一から始めるとも、一からやり直すとも言う。数字の始まりは「一」。画数が一画しかない、最も簡単な漢字でもある。
中国最古の文字学書である「説文(せつもん)解字(かいじ)」は、一という漢字について「宇宙を創造する根元」と解く。だが漢字研究者の阿辻哲次・京都大大学院教授は、それは哲学的解釈に過ぎ、実際は横棒を一つ示すことで数字の「一」を表したにすぎないと言う(中公新書「部首のはなし」)。
その単なる「一」にたどりつくまでが長かった。サッカーJリーグ2部(J2)のファジアーノ岡山が、念願の初勝利を挙げた。J2昇格後、十一試合目でつかんだ「一」だった。
開幕十試合までの成績は全十八チーム中最下位。しかも唯一、勝ち星がなかった。得点力不足は深刻で、守備も崩れる悪循環に陥っていた。手塚聡監督が「このままでは全敗」と嘆いていたほどだ。
まだ一勝だが、誇っていい数字がある。観客数だ。ホーム六試合の入場者数は四万六千五百七十八人。一試合平均では七千七百六十三人。第五位だ。地元のファンとともに勝ち取った一勝といえる。
きょう発行の「山陽子ども新聞・第16号」の第一面では、子どもたちがチームにエールを送っている。次のホームゲームは、こどもの日の五日。大人も子どもも、応援で「一」を重ねよう。