2009年4月28日19時48分
会見する放送倫理検証委員会のメンバー=28日、東京都千代田区
NHKと民放でつくる第三者機関「放送倫理・番組向上機構」(BPO)の放送倫理検証委員会は28日、NHK番組の改変問題について意見を発表した。NHK放送総局長が、放送前に安倍晋三官房副長官(当時)と面談し、その後スタッフに改変を指示した点や、国会担当局長も改変を指示した点について、「公共放送に最も重要な自主・自律を危うくする行為。(事前説明は)いまも繰り返されうる。改善は現在の課題だ」と指摘した。
問題の番組は、従軍慰安婦問題を民間人が裁く民衆法廷を取り上げ、01年に放送された「問われる戦時性暴力」。検証委は、この番組をめぐる裁判で昨年6月に最高裁が認定した事実や、独自にNHKから得た回答をもとに、今年1月から審議した。新たな事実認定はせず、改変に政治家が影響を及ぼしたかどうかも判断していない。
意見書は、「国会対策部門と放送・制作部門は明確な任務分担と組織的な分離がなされていなければならない」と指摘し、「経緯から教訓を引き出し、慣習を点検し、場合によって制度設計をやり直す仕事は、NHKで働く人々に委ねられている」と変革を促した。番組の改変については「質の追求という番組制作の大前提をないがしろにした」と判断した。
NHKは政治家への説明について「国会担当職員が基本だが、他部門が説明した方が合理的な場合、一切認められないものではない」と検証委に回答していた。委員長を務める川端和治弁護士は記者会見で「NHKは現在も制作部門が事前に政府高官に説明する可能性を排除していない。やめて欲しいと申し上げることにした」と語った。
委員会の意見は放送界に影響力を持つが、法的拘束力はない。
◇
BPOの放送倫理検証委員会が意見書を発表したことについて、小丸(こまる)成洋(しげひろ)・NHK経営委員長は28日、同委員会後の会見で、「NHK執行部側の見解をまだ十分に聞いていない。そのあたりを検証しながら、なんらかの形で意見を述べさせていただきたい」と述べ、今後の経営委で議論していく考えを示した。