一方で米国では、ゲーム依存になった子をゲームによって治療するという研究もされているようで、こういう方法も「アリ」なのかもしれません。
もし自分の子供たちがゲーム依存になった時、親として何ができるか、ということは考えますね。ただ、中高年の依存症については、対策が難しいようです。
――日本では、こういう試みはされているのでしょうか。
芦崎 まだでしょう。日本の文科省は、ネトゲの実態も知らないのではないでしょうか。
韓国では、夜10時〜朝6時までゲーム会社が青少年にネットゲームを供給しないようにする、という法律「シャットダウン制」を制定する動きがあり、法案が通りそうです。また中国では既に、「5時間以上続けてゲームをやると経験値が半分になる」といった強制的な措置が取られているようです。
日本の場合は、携帯型のゲームマシンや家庭用ゲームマシンが主流なので、韓国や中国のような対策が講じられていないのかもしれません。
――しかし、日本でもそろそろ対策を考えないといけないでしょうね。
芦崎 ウルティマオンラインなどをはじめとした米国製のゲームは、集団性、組織性、「皆で一緒に戦いに行く」というところが確かに新しかった。ただ、米国人の場合は一人ひとりに自律性があって、眠くなったりすると途中で「じゃあ、自分は抜けるよ」と言ってゲームをやめるんです。しかし、日本人にはこれができない。
日本人には「隣組」というか、組織や集団のしがらみの中から抜けられない傾向があります。義理人情に弱くて、ほかの人に合わせようとしますよね。その国民性があって、ネットにはまってしまう人が増えているのではないかと思うのです。
――ネットの持つコミュニティーの特性が、日本人にとってはしがらみになってしまう…。
芦崎 例えば、ファイナルファンタジーというゲームを作った人は、おそらくここまで日本人が「ゲームから抜けられないストレス」を抱えるようになるとは、思わなかったでしょう。
ファイナルファンタジーは、自分の友達がネット上でどの世界にいるか簡単に分かるようになっています。ゲームクリエーターはきっと、「仲間のいる場所が分かると楽しいだろう」という気持ちでこの機能をつけたのだと思います。しかし実際には、「自分がどこにいるか、皆に知られるのはウザイ」と感じるユーザーが出てくる。
まるで、「自分の恋人が今何をしているのか分かってしまう」という浮気調査のような機能になっており、それがストレスになってしまっているのです。
ゲームというのは、両面を持っているから難しいですね。
――ゲームのいい面と悪い面を理解してつき合えば、社会からドロップアウトすることもないわけでしょうね。ネットゲームのいい面といえば、ご著書の中で、「体に障害があって外に出られない子供たちが、ネット上で対戦するという楽しい経験ができた」というケースを紹介されています。
芦崎 そうですね。今回取材した人たちに「ネトゲのメリットとデメリット」を聞いたところ、「ネットでしか出会えない、たくさんの友人ができたことがメリット。しかし、そのために膨大な時間を費やしたのはデメリット」というのが典型的な答えでした。
繰り返しになりますが、これまで僕らも含めマスコミが作ってきた「アキバ系のイメージ」には、偏りがあります。実は「ネトゲ廃人」にはいろいろな人たち、聡明な人たちもいるという現実をもっと見て、社会のイメージを変えていかないといけないと思っています。
今回の取材では、「ネトゲ廃人イコール引きこもり」という先入観に惑わされずに、彼らにしか分からない言葉を知りたかった。「廃人」というのは彼らにとって共通の言語です。リアルな我々の世界には知られていない、地下水脈のようなもので、この実態をぜひ多くの人に知ってもらいたいと思います。
――ご著書は、単にネトゲ廃人を非難するのではなく、彼らのありのままの姿を丁寧に描いたものになっています。本の発行を機に、世の中の議論を盛り上げていきたいですね。
芦崎 ありがとうございます。これからは、ネトゲ廃人が市民化、大衆化していく可能性があります。
例えば今回の取材で、こんな男性がいました。ゲームのやり過ぎで睡眠時間が取れず、会社で毎日のように寝ている。上司が怒って「ゲームか仕事か」と迫ると、彼は会社よりゲームを取って退社するのです。彼には、ネットゲームの中での使命感があるのですね。
誰しも、今のリアルな世界で「生きがい」も「死にがい」も見い出せない場合、バーチャルな世界で「生きがい」や「死にがい」を見い出したら、そちらの方に行ってしまうかもしれないのです。
今回たまたま僕がインタビューした人たちは、皆それぞれ賢く、能力もある。僕は取材後も、「君たちはいいものを持っている」というメッセージを彼らに伝えてきました。彼ら自身が、自分の能力をどう分析できているか分かりませんが…。
ネトゲ廃人たちには、ぜひリアルな世界で活躍してほしい。彼らにはそれができると僕は思っています。