近所のホームセンターをのぞくと、野菜の苗がたくさん並んでいる。キュウリ、ナス、トマト、オクラ、ゴーヤなど種類は豊富で、競うように買い求める客の姿が目立つ。
食の安全・安心に対する意識が強まる中、自宅の庭やベランダで野菜を作る家庭菜園の人気が高まっている。世界的な不況も加わり、食材を自給して少しでも家計を補いたいとの狙いもあるようだ。
「半農半漁」ならぬ「半農半X(はんエックス)」という言葉を耳にするようになった。先日の本紙夕刊でも紹介されていた。食料をできるだけ自給するつもりで農業を取り入れ、かつ別の仕事などを両立させる生活様式である。
十年ほど前、京都府の男性が新しい生き方として提唱した。「半農」といっても一日の半分を農業に従事することではない。毎日、わずかな時間でもいいし、週末に楽しむだけでも立派な「半農」だとする。
「半X」の方は仕事に限らず、育児や介護、趣味などなんでもかまわない。要するに本格的な農業ではなく、「ささやかな農のある暮らし」の勧めといえる。
これなら誰にでも簡単にできそうだ。そうした生活の中で、農業への理解や食料・環境問題への関心も深まるだろう。これから大型連休が本番を迎える。「半農半X」を始めるいい機会かもしれない。