道内
「長沼ナイキ」違憲判決から36年 当時の裁判長ら本出版 (04/21 08:31)
穏やかな表情で長沼ナイキ訴訟を振り返る福島重雄さん
「自衛隊は憲法九条違反」との唯一の司法判断が下された、一九七三年の長沼ナイキ訴訟札幌地裁判決から三十六年。裁判長を務めた福島重雄さん(78)と研究者二人による編著「長沼事件 平賀書簡」(日本評論社)が二十二日に出版される。これまで多くを語らなかった福島さんへのインタビューや当時の日記を交え、違憲判決に至る流れや憲法と向き合う福島さんの心情などがつづられている。
同訴訟一審判決は、自衛隊を違憲と認めた唯一の判決だが、司法審査権の範囲外とする統治行為論を採用せず、憲法に踏み込んだことも大きな特徴だ。
「長沼事件 平賀書簡」では、長沼を担当することが決まった際の福島さんの日記(一九六九年七月二十三日)から「今までの裁判所は何だかんだといいながら、自衛隊の憲法九条問題を避けてきた。だがいつかはどこかで誰かがやらなければ」と紹介。判決後の日記(七三年九月二十日)は「新しい法理論の展開をしたわけでもなく」「あたりまえのことをあたりまえのように判決しただけ」と淡々と記した。
また、当時の平賀健太札幌地裁所長が福島さんに「国の判断を尊重すべきだ」と求めた「平賀書簡」問題では、書簡を受け取る以前に何度も所長室に呼ばれ、横に座った所長から肩を突かれながら、「ねえ、ねえ、君、慎重にね」と言われたことを明らかにしている。
「長沼事件 平賀書簡」は福島さんと大出良知東京経済大教授、水島朝穂早大法学学術院教授の編著。福島さんと、同時期に道内で勤務していた裁判官らとの座談会なども掲載されている。
福島さんは判決後、同訴訟に関し「あまり触れたくない」と、語ることに消極的だったが「放っておいていい問題ではない」と刊行の要請に応じた。出版に際し、「憲法に踏み込む事件だから踏み込んだだけです。多くの人に憲法と自衛隊について真剣に考えてもらうきっかけになれば」と話している。
A5判、三百七十ページで二千八百三十五円。二十二日から道内主要書店で販売する。
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