連合主催の第八十回メーデーに続き、来月一日には全労連による大会も開かれる。今年は雇用が最大のテーマだ。労働組合は失業と生活危機に直面している労働者の訴えをしっかりと受け止めよ。
新緑鮮やかな東京・代々木公園は若者らの姿で埋まった。連帯を呼び掛ける連合のスローガンは例年通りだが今年は「労働者の使い捨ては許さない」とする大会宣言が目立った。全労連も「なくせ失業と貧困」と雇用重視を打ち出している。
雇用維持と格差是正に焦点をあてたメーデー方針は当然だ。雇用問題は非正規雇用労働者の失業急増など、これからも危機が続く。
政府は今週、本年度の完全失業率を当初の4・7%から5・2%へ下方修正した。過去最悪の5・4%を超えるとの指摘もある。
厚生労働省は六月までに失業あるいは失業する予定の非正規労働者は十九万二千人になると試算している。近く発表される数字はさらに増えるだろう。派遣業界関係者は四十万人以上とみる。
百年に一度の経済危機を理由に経営側は従業員を大胆に削減している。労働者はもはや重要な経営資源ではなく削減すべきコストである。こうした解雇攻勢に対して労組側は強く反撃すべきなのだが、残念ながら無力さが目立つ。
組合員約七百万人を目指す連合に必要なのは、大きな転換点に立っているとの時代認識だ。今春闘では賃上げも雇用もとの戦術をとったが、当初から精彩を欠いた。戦略と戦術を再構築すべきだ。
連合は三月二十三日、政府と日本経団連との間で「雇用の安定と創出」で合意した。一時帰休や残業削減などで雇用を維持する一方、賃金引き下げを認める日本版ワークシェアリングが始まった。政府も雇用調整助成金を拡充して応えたが、これは一時しのぎだ。
多くの労組は正社員中心だがこの際、非正規労働者対策が急務である。まず労働者派遣法改正案の早期成立を目指す。懸案の日雇い派遣の原則禁止に加え、製造業派遣も規制を強化する。そして雇用保険制度見直しを含めて雇用の安全網をさらに強化すべきである。
日本のメーデーは一九二〇年に第一回集会が東京・上野公園で開かれたが、戦前は一時中止に追い込まれた。今年で八十回は人間なら傘寿となるものの、気分よく「労働者の祭典」を祝えない。危機克服に向けて、分裂ではなく統一メーデーを考えるべきだ。
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