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【主張】「体罰」判決 毅然たる指導こそ必要だ
教師が児童の胸元をつかんで叱責(しっせき)した行為が体罰かどうか争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は「体罰に当たらない」とする初めての判断を示した。1、2審は体罰と認め損害賠償を命じていた。これを見直した最高裁判決は妥当であり、評価したい。
訴訟となったのは平成14年に熊本県の小学校で起きた事案だ。臨時講師の男性教師が悪ふざけをしていた小学2年の男児を注意したところ尻をけって逃げたため、男児の胸元をつかんで壁に押しつけ、しかった。
最高裁は体罰にあたるかどうかは目的、態様、継続時間などから判断されるとし、今回のケースは「教育的指導の範囲」とした。
言うことを聞かない子には、ときには、力をもって厳しく指導することは必要だ。学校現場は判決も参考に、自信を持って毅然(きぜん)とした指導を行ってもらいたい。
学校教育法では教育上必要がある場合、児童生徒に懲戒を加えることを認める一方で、体罰を禁じている。
体罰禁止は、殴る、けるなど肉体的苦痛を与えることを禁じたものだ。これが曲解され、暴れる子を制止することも「体罰」とし、教室で騒ぐ子を立たせるといった当たり前の指導にも「苦痛」「人権侵害」などと子供や親が文句をいう例が目立っている。
いじめ問題でも加害者への指導が行われず、出席停止などの厳しい対応をとることが少ない。
こうした現状が批判され、政府の教育再生会議は一昨年、体罰基準の見直しなどを求めた。文部科学省は放課後の居残りや教室で立たせるといった指導は体罰に当たらないとする通知を出している。こんな通知を出さざるを得ないのも、学校の指導が苦情や問題化を恐れて萎縮(いしゅく)しているからだ。
厳しい指導に待ったをかける教育委員会の例もある。今回の判決を契機に、そうした事なかれ主義も一掃してほしい。
犯罪や非行の低年齢化が深刻で、小学生の暴力行為が急増しているという統計も出た。あいさつや服装、きまりを守るなど日常から規範意識を高める指導の重要性が増している。
指導では親と教師、教師同士が連携することが重要だ。親が教師の悪口をいったり、誰かが甘い顔で規則破りを許したりしては子供から信用されない。厳しいしつけや指導は子供のためである。