民主党が国会議員の世襲制限を次期衆院選のマニフェスト(政権公約)に盛り込む方針を打ち出した。選挙への立候補は本来自由であるべきだが、社会に埋もれている優秀な人材を政治に招き入れる1つの試みとして注目に値する。
同党は政治改革推進本部(岡田克也本部長)で意見集約を進めてきた。細部の詰めは残すものの、現職議員の3親等以内の親族が同一選挙区から連続して立候補することを党の内規で禁止。あわせて資金管理団体の3親等以内の親族への引き継ぎも法律で禁止する方向だ。
現在は各選挙区で新人候補が先代から地盤(後援会)、看板(知名度)、かばん(資金力)を受け継ぐケースが珍しくない。衆院の480議席のうち、3親等以内に元国会議員を持つ現職は130人前後。全議員の4分の1に相当する水準だ。
自民党は世襲議員が4割弱に達し、民主党も2割弱を占める。個々に見れば国政に若いころから関心を持ち、即戦力で活躍する人材もいる。しかし世襲候補の割合が多いことは政治を志す新人の参入障壁を高くしている、と問題視する声がかねて出ていた。
民主党は世襲制限とあわせて(1)企業・団体による献金やパーティー券購入の5年以内の禁止(2)経過措置として公共事業の受注企業からの献金制限――などを検討している。西松建設からの巨額献金事件による逆風への危機感が、党内の見直し論議を後押しした側面もある。
自民党では菅義偉選挙対策副委員長が世襲制限に積極姿勢を見せている。ただ党内では、憲法が保障する「職業選択の自由」に触れる、などの理由から一律の制限に反対が根強い。衆院選に向けて民主党との対応の違いが際立つ可能性もある。
日本が小選挙区制のモデルとした英国の下院では、議員の世襲は極めて例外的だ。各選挙区の立候補希望者は政策立案や面接のテストを何度も課され、厳しい公認争いを実力で勝ち抜かねばならない。
世襲制限は国政を担う有為な人材を発掘するための1つの方法だが、各党はそれに加えて、公募制の徹底を含め候補者選びのあり方を真剣に考え直すときにきている。