小2児童の胸元つかみ叱責 最高裁「体罰に当たらぬ」
4月29日7時58分配信 産経新聞
熊本県天草市(旧本渡市)で平成14年、臨時教員の男性が当時小学2年生だった男児の胸元をつかんで叱責(しっせき)した行為が、学校教育法で禁じる体罰に当たるかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(近藤崇晴裁判長)は28日、「教員の行為は体罰に当たらない」と判断し、体罰を認定して損害賠償を命じた1、2審判決を破棄、原告の請求を棄却した。男児側の敗訴が確定した。
教員の行為が体罰に当たるかどうかが争われた民事訴訟で、最高裁が判断を示したのは初めて。
学校教育法11条は「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、児童らに懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」と規定している。同小法廷は「行為に穏当は欠く」としたが、「許される教育的指導の範囲を逸脱せず、体罰には当たらない」と判断。体罰かどうかを判断する要素として、行為の目的や態様、継続時間を挙げた。
1、2審判決などによると、教員は14年11月、休み時間に女子児童をけった男児らを注意。男児が教員の尻もけったため、胸元をつかんで壁に押しつけ、「もう、すんなよ」と怒った。
◇
≪萎縮する教員に指針≫
児童の胸元をつかんでしかる行為を体罰にあたらないとした28日の最高裁判決は、教員が萎縮(いしゅく)するあまり、厳しい生徒指導をためらう教育現場の実情に配慮した判断といえる。
学校教育法11条の体罰の基準は不明確だった。授業中に騒いだ児童を廊下に立たせる指導まで、体罰や人権侵害だと保護者らから批判されることもあり、「モンスターペアレント」という言葉すら生まれた。
体罰について昭和23年の法務庁長官回答では、「懲戒の内容が身体的性質のものである場合」と定義。文部科学省は平成19年2月に体罰基準を見直し、肉体的苦痛を与えるものでない限り放課後の居残り指導や授業中の教室内での起立命令を体罰としない−と全国の都道府県教委などに通知した。しかし、基本的には昭和23年の枠を出ていない。
最高裁判決は「殴る、ける」や「肉体的苦痛」を容認したものではなく、体罰の定義も示していない。しかし、許される行為を明示し、体罰か否かを判断する要素として「目的、態様、継続時間」を挙げたことは、指導に戸惑う教育現場にひとつの指針を与えるものになりそうだ。(酒井潤)
教員の行為が体罰に当たるかどうかが争われた民事訴訟で、最高裁が判断を示したのは初めて。
学校教育法11条は「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、児童らに懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」と規定している。同小法廷は「行為に穏当は欠く」としたが、「許される教育的指導の範囲を逸脱せず、体罰には当たらない」と判断。体罰かどうかを判断する要素として、行為の目的や態様、継続時間を挙げた。
1、2審判決などによると、教員は14年11月、休み時間に女子児童をけった男児らを注意。男児が教員の尻もけったため、胸元をつかんで壁に押しつけ、「もう、すんなよ」と怒った。
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≪萎縮する教員に指針≫
児童の胸元をつかんでしかる行為を体罰にあたらないとした28日の最高裁判決は、教員が萎縮(いしゅく)するあまり、厳しい生徒指導をためらう教育現場の実情に配慮した判断といえる。
学校教育法11条の体罰の基準は不明確だった。授業中に騒いだ児童を廊下に立たせる指導まで、体罰や人権侵害だと保護者らから批判されることもあり、「モンスターペアレント」という言葉すら生まれた。
体罰について昭和23年の法務庁長官回答では、「懲戒の内容が身体的性質のものである場合」と定義。文部科学省は平成19年2月に体罰基準を見直し、肉体的苦痛を与えるものでない限り放課後の居残り指導や授業中の教室内での起立命令を体罰としない−と全国の都道府県教委などに通知した。しかし、基本的には昭和23年の枠を出ていない。
最高裁判決は「殴る、ける」や「肉体的苦痛」を容認したものではなく、体罰の定義も示していない。しかし、許される行為を明示し、体罰か否かを判断する要素として「目的、態様、継続時間」を挙げたことは、指導に戸惑う教育現場にひとつの指針を与えるものになりそうだ。(酒井潤)
最終更新:4月29日7時58分
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