国内予測死者数210万人の"H5N1型"新型インフルエンザは流行しない!
これまで世界で380人以上が発症し、200人以上が死亡している高原病性鳥インフルエンザ(H5N1型)は、感染者の致死率が60%以上という極めて毒性の高いウイルスだ。その鳥インフルエンザウイルスが突然変異を起こし、人から人へと感染する新型インフルエンザウイルスへと変異すれば、国内で210万人が死亡(オーストラリアのロウイー研究所調べ、厚労省発表では64万人)すると予測されている。そんな恐ろしいウイルスの誕生を恐れ、各メディアは昨年末から新型インフルエンザがもたらすパンデミック(感染爆発)の危険性を報じ、「人から人へ効率的に伝播する人型ウイルスに変化するのは時間の問題」と国民の恐怖心を煽ってきた。だが、TheJournal編集部では、これまでの取材の過程で「H5N1型の新型インフルエンザの流行の可能性は限りなく低い」という驚くべき証言を得た。証言者は国内におけるインフルエンザウイルス研究の第一人者である根路銘国昭氏(生物資源研究所所長・沖縄県名護市)だ。
根路銘氏はH5N1型ウイルスが注目されるきっかけとなった、97年の香港での鳥インフルエンザウイルス感染事件のときに、WHO(世界保健機構)の要請を受け、国内の研究者として初めて現地に赴きウイルスを研究し、香港政府に対して約145万羽もの鶏を殺処分するように説得した人物として知られている。
「香港で18人が感染し、6人が死亡した原因となった鳥インフルエンザウイルスがH5N1型であることを確認し、ウイルスを8種類ほど国内に持ち帰って遺伝子分析を行いました。研究の結果、このウイルスは人から人へと感染するヒト-ヒトウイルス(新型インフルエンザウイルス)ではなく、鳥から人へと伝播するトリ-ヒトウイルスであることが分かりました」(根路銘氏)
つまり、香港のウイルスはパンデミックの可能性のないウイルスであったのだ。しかし、厚労省の血液対策課によれば、現在、日本政府は新型インフルエンザ対策として約2000万人分のワクチン(プレパンデミックワクチン)を備蓄し、年内にも新たに1000万人分のプレパンデミックワクチンの備蓄を予定しているという。プレパンデミックワクチンとは、現在の流行している鳥インフルエンザウイルスを基に作られるワクチンのことで、新型インフルエンザに対する有効性が完全に確立しているものではない。
もちろん、最悪のケースを考えて予防策を実施することは必要だが、前出の根路銘氏の証言によれば、H5N1型の新型インフルエンザの流行の可能性は限りなく低いという。
「H5N1型の鳥インフルエンザウイルスが人間の細胞に取り付くためにはウイルスの表面にあるHAタンパク質の構造が人間の細胞と合致する必要があります。つまり、鳥のウイルスが持つ2-3結合という鍵が、人間の細胞の鍵穴と合致したときに新型インフルエンザウイルスの誕生となり、人から人へ感染する新型インフルエンザのパンデミックが起こるというわけです。しかし、人間の細胞は2-6結合の鍵穴しか持っておらず、鳥のウイルスが人の細胞に取り付くためには2-3結合が2-6結合へと変化しなければなりません。そのためには鳥のウイルスが持つ4つの2-3結合が全て同時に2-6結合に変化する必要があるため、その可能性は科学的に考えて限りなく低いと言えるわけです」(根路銘氏)
それなのに、なぜ約165億円もの予算を費やして、政府は、まったく無駄になる可能性の高いワクチンを備蓄し続けるのだろうか。
「日本政府には冷静かつ科学的にウイルスを研究している学者がいないのです。H5N1型が流行するという声を上げ、予算が欲しいだけの良識のない研究者の声を真に受けて、科学的根拠の乏しい予防策を行っている。鳥から人への感染が認められた現在の段階で、数千万人分のワクチンを備蓄するという政府の方針は、国際的なルールから見ても逸脱しています」(根路銘氏)
繰り返しになるが、政府が備蓄しているプレパンデミックワクチンは、これまでに流行した鳥インフルエンザに対するワクチンであるため、新型インフルエンザの予防に効果的であるかは分からない。しかも、新型インフルエンザが誕生しなければ全てが無駄になってしまうのだ。
「もし、H5N1型の新型インフルエンザウイルスが誕生しなければ備蓄したワクチンは全て捨てるしかありません。もちろんパンデミックが起こるよりも、ワクチンが無駄になったほうがよいことは間違いありません。全ては可能性の問題ですから、予防が大切であることに変わりはありません。しかし、新型インフルエンザに対して政府が最優先で行わなければならないことは、発生の可能性が低いウイルスに対して効果が分からないワクチンを膨大なお金を費やして備蓄するよりも、致死率が60%といわれる強毒性のウイルスの感染率を効果的に減少させることだと私は考えます。そのためには養鶏場や汚染された施設に噴霧できる消毒薬の開発をすすめる必要があります」(根路銘氏)
あるウイルス研究者は、記者の取材に対して、こう言い放った。
「確かに、可能性が少しでもあれば対応すべきかもしれません。でも、専門家の間ではパンデミックは起こらないというのが常識ですよ。その辺はメディアを含め、みんな分かった上で騒いでいるんでしょう」