【西武7―2ソフトバンク】お立ち台の主役が本拠地に帰ってきた。「今年も西武ドームで頑張ります。帰りは春を感じて帰ってください」。昨季11勝中、10勝を西武ドームでマークした“内弁慶”石井一が今季初勝利を飾った。
ノーヒットノーランを予感させる快投だった。6回1死まで無安打投球。川崎に左翼線二塁打を許し、大記録は逃したが7回途中まで2安打1失点。プロ2度目の快挙については「どっちみち安打は打たれるので気にしなかった」と素っ気なかったが、「ずっといい投球ができていなかったので気合を入れました」と初回から飛ばした。
前回登板の22日はプロ最短タイの1回5失点でKOされた。「もうこれ以上は許されない危機感があった」。“ラストチャンス”のマウンドで今季初めてフォークを解禁した。投球する際にフォームに癖が出やすいことから敬遠していた球種。しかし、今季は空振りやファウルを狙ったスライダーが痛打され、フォークの必要性に迫られた。4回。四球と自らの失策などで招いた1死二、三塁。4番・小久保をカウント1―1からフォークで三ゴロに打ち取ると、続く長谷川も抑えて無失点で切り抜けた。
スライダーもさえた。「横に曲がると(打者が)とらえやすい」と腕の位置を高くして、縦軌道に変えた。4回無死二、三塁からの松中、6回2死満塁での長谷川からは、いずれもそのスライダーで三振を奪った。
くしくも今季初勝利は楽天・野村監督の通算1500勝と同じ日となった。「僕を育ててくれたのは間違いなく野村監督」と話すヤクルト時代の恩師。指揮官の下で48勝を挙げた左腕は「ちょっとは貢献できたかな。1500敗の方に」。野村監督譲りのユーモアで祝福した。