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緑を作り上げる仕事人、庭師。
樹木の特性、水の流れ、日照、季節変化など、自然を知り尽くし、さらにそれを生かす技が求められる職人の世界です。
全国で庭を持つ家は減り続けているにもかかわらず、今も庭師を目指す若者は多くいます。中でも1000年以上、都として栄えてきた京都は、庭師修行の総本山となっています。
今回の主人公、渡邉基史さん(25)は、今では珍しい住み込み修行スタイルの造園会社に入って3年目。10年修行を積んで到達できると言われる世界で、先輩に厳しく怒られながら技を身につけ、将来の独立を目指します。
先輩後輩との切磋琢磨やお客さんとの関わり合いの中、日々成長していく渡邉さんの姿を通して、庭師職人の世界を紹介します。
自然を知り、そして生かす。磨き上げた技が、自然の美と魅力を届けます。
■ 庭師とは? ■ 庭師になるには? ■ 収入・待遇は? ■ 仕事の味
■ 庭師とは? ■ 庭師になるには? ■ 収入・待遇は? ■ 仕事の味
 庭をはじめとして、公園、街路樹、ガーデニングなど、街中に溢れるさまざまな自然空間を作り、また維持管理するのが庭師の仕事。そのほとんどが全国に5万ある造園会社に勤める職人です。
 街中に自然をとどめようとしても木は伸び、草は生い茂ります。自然に帰ろうとする自然を庭師が止めつつ、きれいな形に収め、私たちに届けてくれているのです。
 また、家の場合、庭だけでなく家以外の外回りすべてが仕事の範囲です。たとえば竹垣、壁、ガレージ、犬小屋など、建築土木の仕事も一手に引き受けます。庭師の仕事はとても奥深く、そしてまた幅広いのです。

◇全国の状況・今の状況
 全国で5万あるといわれる造園会社。その大きさや事業内容もさまざまです。家族経営から50人規模の会社まであります。規模が大きくなればなるほど、公園や街路樹の管理など、公共工事の側面が強い仕事が多いようです。
また、全体的に若者不足が叫ばれる伝統産業の中でも、若い人が多い業界です。全国に造園の基礎を学べる専門学校や造園会社などがあります。
ただし、最近は和風の庭を造る家も減っています。逆に増えているのは、庭をなくしてガレージにする仕事など。また、和風の庭より洋風の庭やガーデニングなどの仕事も増えているようです。

◇どんな人が向いてるの?

その一、まずは体があってこそ
何よりまずは体が資本。数キロにもなる切った枝葉を運んだり、大きな石を担いだり、腰をかがめて刈り込みしたり、一日中炎天下でこうした仕事を続けるのに虚弱体質では務まりません。しかし、基史さんも最初はひょろひょろの体。ですが今は、特にトレーニングを積まずともムキムキの体に変身しました。もちろん、体力だけではなく、そのハードさに耐えられる精神力、そしてどれだけ仕事に没頭できるかも大きな鍵です。
その二、自然に深く入り込む
数多くの樹木や自然が相手です。知れば知るほど奥深い自然の世界を“面白い!”と思えるかどうか。それが仕事のやりがいにもつながる大事な要素です。
その三、人を想える心
庭師は何より家の持ち主あっての仕事です。自己満足の作品を作るのが仕事ではありません。その家の持ち主は何を求めているのか、どうすれば喜んでもらえるのかをしっかり理解し、そのためならどんな地味な掃除でも隅々まで手を抜かない、その気持ちが大事です。
その四、“正解”を作れるセンス
庭師の仕事に正解はありません。結局は家の主に喜んでもらえればそれが“正解”になるのです。ひとつとして同じ木や石、気候や環境はありません。その場その場の状況と求められているものをよく見極め、自分の知識や技をフルに使って、“これが良い!”と思うことを実行できる力が大事です。

■ 庭師になるには? ■ 庭師とは? ■ 収入・待遇は? ■ 仕事の味
◇どうすれば庭師に?
 庭師になるのに特別な資格は必要ありません。高校や短大、大学、専門学校など、造園を学べるところが全国におよそ130あります。そこからの縁故で造園会社へ採用されるケースも多いようです。またハローワークなどでも募集を出すところがあります。基史さんのように未経験でもやる気さえあれば飛込みで入れてくれる会社もあります。
 ただし、学校を出ても実践を積まなければ仕事にはならないといいます。自然が相手の正解がない仕事。経験が何よりの勉強です。やる気とセンスが問われる世界です。

◇ステップアップの道すじ
 庭師といってもすぐに庭を造れるわけではありません。親方の行う「庭造り」を、見て、学びます。一人前になるには、10年は経験が必要だといわれています。それまでの道のりはコツコツ、コツコツ…

その一、「手入れ」
「庭造り」に通じる基本を学ぶ
道具の準備と片付け
100を越える種類の道具の名前と用途を少しずつ覚えていきます。
草引き、掃除
すべてひとつ残らず取り除く、庭師の基本といわれる仕事です。どんなに綺麗な庭でもこれができなきゃ台無しです。
その二、「刈り込み」
大きなハサミで行う繊細な仕事
両手ばさみで、生垣などの大きさと形を整えます。四角や丸型に切るだけで簡単と思いきや、相手は自然、はさみは平ら。微妙な凹みができてしまったりと、一筋縄ではいかない仕事です。腕を一定にして、重くて長いはさみを持っていると腕がプルプル…。
その三、「剪定」
自然がわからなければできない技
のこぎりやはさみを使って立木の枝葉を落とします。目的は“木の姿を整える!”…だけに留まりません。 下の苔への日当たりを考えて枝を切ったり、風通しを考えたり、花が咲くように傷を入れてみたり、などさまざま。それも今だけでなく、季節の変化、さらには数年先の成長まで見据えてはさみを入れていくのです。自然を理解して初めてなしうる奥深い仕事です。 …任される時期は造園会社によってちがいます。遅い会社は2年目や3年目から。 …簡単な種類の樹木や見えにくい位置にある木から、徐々に難しい重 要な木へ移っていきます。
その四、「庭造り」で仕事を一部任される!
親方への大きなステップ!
会社によって任される仕事はさまざまですが、ここまでくれば庭造りにだいぶ近づいた証です。
仕事はさまざまです。たとえば、庭造りにかかわる見積もり書の作成や計算。また現場では、植物を植えたり、石を据えたりするときにそのバランスや、歩きやすさ、緑の見せ方などを考えたり。
施主との交渉や、全体のバランスを見る目、リーダーシップなどが必要になってきます。
その五、最終地点は「庭造り」!
最後に待つのは「庭造り」です。基本的には“親方”と呼ばれる人のみができる仕事です。
家の持ち主の意見を聞きながら、自分の持てる力を発揮して石や木を動かし、水を流し、ダイナミックな世界を作り出していきます。季節や時間によって姿を変えていく“庭”は総合芸術とも呼ばれます。
そのため親方には、見積り計算、図面作成、従う庭師たちの人員役割分担、など、ありとあらゆるトータルな能力が求められます。
 しかし、親方はいわば“会社の社長”です。だれもが親方になれるわけではありません。「庭造り」を一生行わない職人もたくさんいます。造園会社をわたり歩きながら、手入れの仕事を続けていくのもまたひとつです。腕の良い庭師はどこでも必要とされ、またそれに見合った報酬があるのです。


◇窓口・相談先
庭師に関連する組合は以下の二つです。

□ 社団法人 日本造園組合連合会 □ 03(3293)7577
  東京都千代田区内神田1-16-9内神田サニービル6階
  http://www.jflc.or.jp/

□ 社団法人 日本造園建設業協会 □ 03-3263-3039
  東京都千代田区麹町5丁目3番地麹町中田ビル9階
  http://www.jalc.or.jp/


■ 収入・待遇は? ■ 庭師とは? ■ 庭師になるには? ■ 仕事の味
◇収入のめやす
 収入は会社員として勤めた場合、平均16万円です。ただし、会社の規模などによって差があるようです。
 基史さんのように、京都に今もわずかに残る住み込みの場合、食費や光熱費など生活費などは一切かかりませんが、もらえるのはおこづかい程度。自由な時間もあまりなく、遊ぶこともできません。
 厳しい!と思うかもしれませんが、お金をもらいながら技を磨くことに専念できる環境ともいえます。
 どちらの場合にも収入は腕次第。腕が上がればそれに見合ったお金がついてくる実力勝負の職人の世界です。

◇庭師のある一日
  基史さんの一日(9月)

ある一日


◇生活サイクルと休日
 仕事は朝8時からというところが多いようです。早すぎても近所に迷惑。しかし日の出ている内が勝負です。最近は日が落ちても灯りをたいて、仕事を続けるところもあるようです。休憩は10時、12時、15時の3回。それ以外はせっせと動き回ります。
 夕方会社に戻ってからは、その日の道具の片付け、そして明日の道具の準備が待っています。自分の道具はすべてが終わったその後、自分の時間でしっかりと手入れをします。
 忙しい時期は、お盆前や正月前。親戚が集まるこの時期は、庭を綺麗にしてほしいという依頼が多いそうです。また庭造りは冬の間に行います。植物が生長を休む時期に移植するためです。
 休みは、昔は雨の日だけでしたが、最近は土日を休みにしているところが多いようです。長期休みはお盆や正月。お客が休みになれば庭師も休みです。しかし、庭を見に行ったり、剪定の練習をしたり、華道や茶道を習ってセンスを磨いたりと、休みを使って研鑽を積む庭師もたくさんいます。

■ 仕事の味 ■ 庭師とは? ■ 庭師になるには? ■ 収入・待遇は?
◇おいしさ
 手入れで庭が姿を変えていく瞬間や庭が作られていく瞬間。仲間と仕上げた庭を見たときの快感は何よりのやりがいです。また自然が相手、正解はありません。剪定や庭造りは、家の主の意見と基本さえしっかり抑えれば、あとは自分のセンスで自由に表現することができるのです。
 そして、その上でお客に感謝までされたとき、それは最高の瞬間!またお客との関係はそこで終わらず、毎年のように手入れで家へ足を運び、仲はさらに親密になっていきます。「ありがとう」その一言で庭師は磨かれていくのです。

◇苦さ
 苦いのは怪我。蜂や毛虫などに刺されたり、木のささくれや枝にひっかかったり、背の高い木や脚立から落ちたり、はさみやのこぎり、チェーンソーなどの刃物で切ってしまったりと、いつも傷は絶えません。また、常に外仕事。暑さ寒さにも耐えなければなりません。自然を相手にする仕事である以上避けられないことです。
 しかし、そうした辛さがあるからこそ、仕事を終えたときの喜びもひとしおなんです。

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