【暮らし】どう備える?新型インフルエンザ 入念な手洗い習慣に2009年4月30日 メキシコから広がった豚インフルエンザが新型インフルエンザと認定され、パンデミック(世界的流行)の恐れが現実味を帯びてきた。正しい知識を持ち、「感染しにくい生活習慣」を心掛けたい。名古屋大医学部で院内感染対策の責任者を務めてきた鳥居啓三医師(現・三菱レイヨン産業医)に聞いた。 (安藤明夫) −新型インフルエンザの感染の仕組みを教えてください。 新型インフルエンザがどんな性質を持つのか分かりませんが、今のところ通常の季節性インフルエンザと同様に飛沫(ひまつ)感染、接触感染が主な経路と考えられています。 まず、飛沫感染について。感染者が咳(せき)やくしゃみをすると、病原体の周りを水分が取り囲んで、口から出てきます。この飛沫が、周囲の人の鼻やのどの粘膜に付着して感染します。水分の重みで下に落ちるので、拡散範囲は二メートル以内。ですから症状のある人の二メートル以内に近づかないことで飛沫感染を予防できます。また、感染者が不織布製のマスクをすればウイルスの拡散を防ぐ効果が確かめられていますし、健常者が予防のためにマスクをするのも恐らく有効です。 次に接触感染ですが、ドアのノブ、照明のスイッチ、電車のつり革など、人がよく触る部分にはウイルスが付着している可能性があります。そこから指先にウイルスが付き、その指で無意識に鼻や目のあたりを触ると、感染するわけです。 −そのため手洗いが大事だと。 流水とせっけんで洗う場合は、十五秒以上は洗ってください。消毒用のアルコール製剤を使う時は、しっかりと擦り込んで洗うことが大事です。親指の内側、指先、指の付け根など洗い残しやすい部分があるので、意識して洗ってください。 −室内の清掃は? 国内感染の警戒宣言が出れば、職場でも家庭でも清掃の頻度を上げると思います。その場合、照明のスイッチなどウイルスが付着しやすい場所はよくふいてほしい。床の掃除は、掃き掃除だとウイルスを舞い上げる恐れもあるので、掃除機で吸引してください。消毒液などを使う清掃で、手袋を使う方も多いですが、手袋を外してから手洗いすることも忘れないでください。手袋には目に見えない穴が開いていることも多く、安心できません。 −国内感染に備えて、準備したいことは。 不要不急の外出を避けるためにどうするか、自分や家族がかかったらどうするか、家庭でよく話し合ってください。慢性疾患があって医療機関にかかっている人は、発生時には薬をまとめて出してもらうとか、主治医と相談してください。学校が休校になっても、子どもさんが公園で遊んでいては感染につながる恐れがあるので、お子さんの世話も必要になります。 また、この秋に、通常のインフルエンザのワクチンが確保できるようなら接種をお勧めします。冬場の流行期に新型インフルエンザの発生が重なったら、医療現場は大混乱です。ワクチン接種を受けておけば、通常のインフルエンザにかかったとしても重症化を防げますから、受診せずに済むことを期待できます。 地域の行政機関が備蓄品のリストや、流行した場合の医療機関へのかかり方などを広報しています。よく読んでください。「発熱相談センター」や保健所などへの連絡方法を確認しておくことも大切です。 新型インフルエンザの流行は避けられないかもしれませんが、何より大切なのは、一人一人の行動です。短期間に大流行することを食い止められれば、医療の混乱を最小限に防げるし、ワクチンを作ったり、社会インフラを立て直す時間を稼ぐことができます。
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