【NPO通信】教育研究所(4) ひきこもり若者独白2009年4月28日
長期間ひきこもりになる人たちは、どのような考えで自宅から出られなくなるのか。NPO法人教育研究所が運営する宇奈月若者自立塾(黒部市)でひきこもりを脱した人の告白をひもとき、背景に迫る。 十年近くひきこもった県内在住のAさん(26)はひきこもりだったころを振り返る。 「もう、二度とひきこもりたくないが、ひきこもると苦しいとかつらいという感覚はなくなる。毎日が過ぎるだけで何も成長しなかった。同世代の群れから離れていくことを強く感じ、級友に会いたくなかった。皆は高校卒業し大学や専門学校、就職とそれぞれの道を歩きだし、学び成長していく。しかし、自分の時計は中学二年で『いじめに遭うのではないか』という不安が強くなった時から止まったままだ」。まだ、高校生かと思われる童顔の表情で答える。 Aさんもそうだが、ひきこもりの長かった二十〜三十代の人に会うと、年齢よりも非常に若く動作やしぐさが中高生そのものである。確かに時計は止まったのかもしれない。家族はどう対応したのか。 「いじめは被害妄想だから、当然、うやむやになってしまった。不登校については『本人が一番つらい大変な思いをしたのだから心の傷が癒えるまで待ってあげましょう』というカウンセラーの意見で対応は何もなかった」 「十九歳の時、いつまで待っても変化がないので母親は心療内科に相談した。精神科医は『うつですね。息子さんの様子を見守ってください』と言い、抗うつ剤を処方された。最初のうちは服用したが起き上がれなくなり自分で服用をやめた」 「今の僕は何一つできない。自信が全くない。勉強だけはできたから最初は勉強の遅れが気になったが、高校を卒業するころになると、もうどうでもよくなった。将来のことが不安になり、葛藤(かっとう)が起こったが、誰とも相談せず、現状を変えたくないという自己中心的な結論を出し、その意見に逆らうならば母親でも殴った。母親は暴力におびえ何も言わなくなった」 ひきこもると、多くの若者は不安から現実逃避の考えが強くなり常識が欠落していく。ひきこもりの長期化から来る悪循環の始まりだ。 (NPO法人教育研究所理事長 牟田武生)
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