「変死人の発見について」。支局には、こんな表題の広報資料が毎日のように警察から送られてくる。取材を進めるが、多くの場合は自殺と推測される案件だと判明する。自殺であれば、ほとんどの場合は記事化を見送っている。主な理由は遺族への配慮だ。
以前、自殺した方の遺族を取材した際には、話を聞かせてもらえるまでに半年を要した。単に警察発表だけを聞いて記事にして良いものではない。取材する側にも相当の覚悟が求められる問題だ。
4年間の記者経験で耳にした自殺の要因を思い返してみた。過労、多重債務、いじめ、石綿関連病……。自ら命を絶つ方々は、社会の不条理と矛盾に警鐘を鳴らしているのだと実感する。
記事にするのは難しくても、無機質な広報資料の中に隠れている“人間の声”に耳を傾ける努力だけは怠らないようにしたい。【大久保昂】
〔播磨・姫路版〕
毎日新聞 2009年4月26日 地方版