07年に明治大学応援団リーダー部(08年1月解散)の男子学生(当時21歳)が先輩から暴力を受けて自殺した問題で、水戸市に住む学生の両親が当時の応援団長の男性に約9900万円の損害賠償を求めて水戸地裁(窪木稔裁判長)に提訴した。両親は元団長の暴力などが自殺の要因と主張。一方、元団長側は大学の調査報告書にはなかった別の団幹部によるいじめがあったとし、「他の上級生や大学に責任がある」と、請求棄却を求めている。
訴状によると、学生は05年に入学。リーダー部で上級生から下腹部の露出や部室の居残りなどを強要された。06年12月に元団長に暴力を振るわれて自殺未遂を起こし、翌月退部を申し出たが断られた。その後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、07年7月に自殺した。
両親は、元団長による退部の意思撤回の強要がPTSDに陥らせ、自殺に至ったと主張。
大学や他の上級生は和解に向けた話し合いに応じたが、元団長のみ「一貫して責任を回避した」として今年2月に提訴した。
これに対し、元団長側は答弁書で「部に残ったのは学生の意思」と反論。自殺の主要因は、2学年上の応援団幹部による「長期間にわたる執拗(しつよう)で常軌を逸したいじめ」として、これを放置した「大学こそ責任が認められるべきだ」と訴えた。
元団長側が主張した幹部のいじめは、排便の様子や裸にして冷水と熱湯をかけ、苦しむ姿をビデオ撮影したなどの内容で、大学が昨年1月に公表した調査報告書には記載されていないものも多い。
報告書は、学生に対する暴力行為があり、団活動が精神的苦痛を与え、自殺に結びついた可能性を指摘。大学は「閉鎖的な組織で、自力による改善の余地がない」として部を解散させた。【原田啓之】=一部地域既報
毎日新聞 2009年4月25日 地方版