【Fairy Garden】

第3話 『 ガルベロスの侵攻 』

★配役:♂3:♀2=計5人

【人物紹介】 * 名前クリックで画像表示します。

リオン・ラグナス ♂=アルキド王国の騎士だったが、とある事件から、今は雑用係にさせられている眼鏡の青年。
気弱で争いを好まない性格だが、体内に凶悪な人格『ラドゥ』を宿している。
ララのマスターだが、その性格から主従逆転する事もしばしば。

カルロス・ガルガーニ ♂=アルキド王国の騎士団長。
王国でも高名な貴族であるガルガーニ家の息子で、アイリーンの婚約者でもある。
高圧的な態度の為、部下からの信用は薄い。

ブラッド・ガルベロス ♂=この地方にしては珍しく、長い黒髪と黒瞳を持つガルベロス公国の首領。
普段は礼節をわきまえているが、内心には冷酷な面と強い野心を抱く危険な男。
闇の妖精ベネットのマスター。

ララ ♀=光の妖精。妖精学校を卒業すると同時に、人間にエナジーを供給してもらう為、人間界にやってきた。
リオン・ラグナスをマスターとするが、その性格から主従逆転する事もしばしば。

ベネット ♀=闇の妖精。ララ・レム・ヨヨの同級生。
妖精学校を卒業すると同時に、人間にエナジーを供給してもらう為、人間界へ旅たつ。
己の魔力に絶対の自信を持つ、ララのライバルで、ブラッド・ガルベロスをマスターとする。



【 ガルベロスの侵攻 】

(深夜・ガルベロス公国・王室。)

ベネット:「調子はどうかしら?・・・マスター。」

ブラッド:「既に先手の配備は完了しているよ・・・ベネット。」

(薄暗い部屋の中、黒髪黒瞳のブラッドが微笑む。)

ベネット:「へぇ、人間にしては仕事が早いのね。」

ブラッド:「フフ・・・こう見えて私は強欲主義者でね。
      欲しいモノは可能な限り、早く手に入れたいのさ。
      それが宝であれ女であれ・・・国であれね。」

ベネット:「そぅ・・・。」

ブラッド:「しかし、君の言う通り、ガロン率いる騎馬隊を送ったが・・・。
      王国一つ滅ぼすには・・・少々、戦力不足ではないかね?」

ベネット:「問題ないわ。騎馬隊長のガロンには、妖精がひとり仕えているもの。
      城のひとつやふたつ、簡単に落とす事が出来るでしょうね。」

ブラッド:「ほぅ。ならば朗報を楽しみにしていようか。」

(キャビネットに向かい、ワインを取り出すブラッド。)

ブラッド:「君も飲むかい?」

ベネット:「・・・遠慮しておくわ。」

ブラッド:「フフフ・・・。せっかくこんな時間に訪れたんだ。
      君も楽しめば良いのに。」

ベネット:「・・・・・・。」

ブラッド:「ふぅ・・・これでようやく理想に一歩近づける。」

ベネット:「大陸統一の事かしら?」

ブラッド:「そうさ。もっとも・・・大陸だけでは、私は満足しないがね。」

ベネット:「ウフフ、世界征服でもするつもり?」

ブラッド:「フフ、それもいいね。」

ベネット:「随分と子供じみた夢なのね。」

ブラッド:「そうかね?私はこれでも真剣なのだが。」

(微笑みながらグラスを傾けるブラッド。)

ベネット:『・・・所詮こいつもくだらない人間ね・・・。』

ブラッド:「君は今の地上をどう思う?」

ベネット:「地上?・・・汚い処ね。
      人間同士の戦で汚れきっているわ。」

ブラッド:「そう。汚れきっているんだよベネット。」

ベネット:「ぇ?」

ブラッド:「だから一度、世界は浄化される必要がある。
      私という法の下で、くだらない人間や汚い世界を滅ぼしてやるのさ。」

(言いながら眼を細めるブラッド。)

ブラッド:「それこそが私の考える理想郷だよ。」

ベネット:「・・・とんだ傲慢ね。それで貴方はどうするの?」

ブラッド:「フフフ・・・そして私は・・・神となる。」

ベネット:『・・・さすが私と波長が合うだけの事はあるわね。
      ウフフ・・・しばらくは退屈せずに済みそうね。』

(朝・アルキド王国・リオンの家。)

リオン:「う〜ん・・・ララさんまだ寝てるのかなぁ・・・;」

(時刻は既に10時を回ろうとしている。)

リオン:「仕方ないなぁ・・・起こしに行こう。」

(ララに貸した父の部屋へ向かうリオン。)

リオン:「ララさぁ〜ん!朝ですよ〜!起きてくださぁ〜い!」

リオン:「・・・・返答なしか・・・もぅ!入りますよ〜?」

(部屋に入り、ララを起こすリオン。)

リオン:「起きてくださぁ〜い!ララさぁ〜ん!」

ララ:「・・・zzz・・・。」

リオン:「まったく・・・寝顔はこんなに可愛いのに♪」

ララ:「・・・ん〜・・・・。」

リオン:「それにしても・・・ララさんが寝ていると、このベットも余計に大きく見えますねぇ。」

ララ:「・・・ふぁ〜・・・おはよぉ〜レム、ヨヨ・・・。」

リオン:「ぇ?あの・・・リオンですけど。」

ララ:「ん〜・・・?」

(眠気眼をこすりながら起き上がるララ。)

リオン:「やっと起きましたね♪おはようございまs・・・うぎゃ!?」

(リオンの顔を見るなり、頬を蹴り飛ばすララ。)

ララ:「ちょっとぉぉぉっ!!!何でアンタが部屋に居るのよっ!!!!」

リオン:「ぅぅ・・・何でって・・・なかなか起きて来ないから;」

ララ:「乙女が使ってる部屋へ勝手に侵入するなんて、信じらんないわっ!!!」

リオン:「へ?あ、す、すみません!?」

ララ:「早く出てってよっ!変態!大馬鹿者ぉ〜!!」

リオン:「い、いてててて・・・わかりましたよぉ!?」

(そのまま部屋を追い出されるリオン。)

リオン:「うぅ・・・起こしに来ただけなのに・・・;」

(数分後、ララがリビングに姿を現す。)

ララ:「まったく・・・これだから人間の男は嫌なのよ。」

リオン:「だ、だから謝ってるじゃないですかぁ〜;」

ララ:「アンタ・・・まさか寝てる私に何かしてないでしょうねぇ〜?」

リオン:「な、何にもしてないですよ!」

ララ:「ホントかしら・・・。まぁいいわ。
    でも、今度勝手に侵入したら・・・その頬が3倍に膨らむからね!」

リオン:「ぅぅ・・・既に1.5倍なんですけど;」

(リオンが用意した朝食を食べるララ。)

ララ:「ぅ〜・・・何か変な味付けね・・・。」

リオン:「料理苦手なんですよ;」

ララ:「まぁこの際、贅沢言ってられないか・・・。」

リオン:「ところでララさん?」

ララ:「何よ?」

リオン:「少し気になったんですけど、エナジーって僕の側に居るだけで供給されてるんですか?」

ララ:「・・・側に居るだけじゃダメよ。ちゃんと契約しないとね。」

リオン:「契約?」

ララ:「そうよ。契約があって初めてエナジーが供給されるの。」

リオン:「へぇ〜。それじゃ早く契約した方が良いんじゃないですか?」

ララ:「ぅ・・・ま、まぁそうなんだけど・・・////////」

リオン:「どうしたら契約できるんですかね?」

ララ:「そ、それはその・・・私がリオンの手に・・・/////////」

リオン:「手に?」

ララ:「〜〜〜〜っ//////と、とにかく!まだ契約しないわよ!////////」

リオン:「え?だって早くしないとララさんが危ないんじゃ・・・?」

ララ:「そんなスグに消えるわけじゃないもん!
    それに、嫌なヤツと契約するくらいなら、私は死を選ぶわ!」

リオン:「な、何だか意地を張ってるような・・・。」

ララ:「ち、違うわよ!///////」

リオン:「う〜〜ん、それじゃ僕は、早くララさんに認められるように頑張りますね♪」

ララ:「ふんっ、当然でしょ!!//////」

(朝食が終わると、出かける準備をするリオン。)

リオン:「よいしょっと。」

ララ:「あら?どこか行くの?」

リオン:「はい、昨日の武器倉庫がまだ整理できてなかったので。」

ララ:「そう。それじゃ私も行くわ。」

リオン:「え?手伝ってくれるんですか?」

ララ:「アンタねぇ〜、人間の武器なんて、小さい妖精の私に持てるわけないじゃない。」

リオン:「それもそうですねぇ・・・。」

ララ:「大体、こぉ〜んなか弱い女の子に、重い物を持たせる気なの?」

リオン:「・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そうですね。」

ララ:「むぅ〜!何よ今のながぁ〜い間は〜!」

リオン:「あ、あははははは;
     でも嬉しいですよ♪いっつも僕は一人でしたから♪」

ララ:「そ、そうよ。話し相手になってあげるだけ、ありがたいと思いなさいよ!」

リオン:「はい♪それじゃ行きますよ♪」

(アルキド王国・武器倉庫内。)

リオン:「よいしょ・・・よいしょ・・・!!」

ララ:「頑張ってるところ悪いんだけど、訊いていい?」

リオン:「ふぅ〜・・・何です?」

ララ:「何で雑用なんてやってるの?」

リオン:「ん・・・ちょっとした事件があって・・・。
     僕は騎士を辞めさせられちゃったんですよ。」

ララ:「事件って何?」

リオン:「・・・・・すみません。言いたくないです・・・。」

ララ:「・・・それって【皆殺しのリオン】っていうのと関係あるの?」

リオン:「昨日の話、聴こえちゃってましたか・・・。」

ララ:「まぁ・・・言いたくないならいいわ。
    変な事訊いちゃってごめんね。」

リオン:「・・・すみません・・・。」

ララ:「さぁ、それで終わりなんでしょ?早く帰りましょうよ。」

リオン:「ぁ、はい。」

(その時、倉庫の外で慌しく動く騎士団の姿を見かけるリオン。)

リオン:「ん・・・?騒々しいですね・・・どうしたんでしょう?」

カルロス:「各自準備を怠(おこた)るな!」

リオン:「ぁ、カルロスさん。一体どうしたんです?」

カルロス:「む?あぁ・・・リオンか。
      ガルベロス公国の騎馬隊がこちらに向かってるらしくてな。」

リオン:「ガルベロス公国・・・・。」

カルロス:「既に、我らアルキド王国の砦を突破したらしい。
      このままでは、街にまで侵入されてしまう。」

リオン:「た、大変だ・・・。」

カルロス:「おまえは街に避難勧告を出しておけ。
      もし敵兵が街に侵入しても、決して外には出ないようにな。
      それくらいなら無能なおまえでも出来るだろう?」

リオン:「カルロスさん達は・・・?」

カルロス:「我等は街の外で防衛ラインを張る。
      このまま、みすみすヤツ等の好きにはさせん。」

リオン:「あ、あの!他に・・・僕に出来る事はないですか?」

カルロス:「・・・貴様・・・またあの事件を繰り返すつもりか?」

リオン:「っ・・・・。」

カルロス:「貴様には剣を握らせんぞリオン。大人しくしているんだな。」

リオン:「・・・・・。」

カルロス:「皆の者ゆくぞ!これ以上、ヤツ等の侵攻を許すな!」

(騎士団を連れて去ってゆくカルロス。)

ララ:「・・・相変わらず嫌〜な男ね・・・。」

リオン:「僕は・・・僕は・・・。」

ララ:「リオン?」

リオン:「ぁ・・・す、すみません・・・帰りましょうララさん・・・。」

ララ:『私はこの時、リオンの冴えない顔に、深い悲しみを見たのでした。』

〜 第3話・end 〜