問題
業績を伸ばし続けていた会社が、突然、倒産しました。どうして黒字なのに倒産したのでしょうか?
(1)粉飾決算していて実は赤字だった
(2)借入金が増えすぎて返せなくなった
(3)銀行がお金を貸してくれなくなった
(4)経営者がお金を使いこんでいた
答え
倒産するのは赤字会社ばかりではありません。赤字を出していても、お金が回っている限り、会社は生き続けます。借金の返済や買掛金の支払いができなくなって、経営が続けられなくなったとき、会社は倒産します。直接的には、利益の状況よりもキャッシュの状況が問題です。可能性としては、(1)や(4)もありますが、一般的には(2)と(3)が正解です。
解説:倒産って何?
私たちは経済的に破たんして経営が続けられなくなった状態を倒産と呼んでいますが、倒産には実は法的な定義はありません。どれほど赤字を出していても、支払いを続けられる限り、借金の返済を続けられる限り、会社は倒産しません。バブル崩壊後は、銀行が「債権放棄」して経営再建に臨むケースも見受けられました。あまりに借金が多いと、倒産してしまうよりも、借金を一部棒引きすることで経営を立て直して残りを返してもらったほうが金融機関にとって得な場合があるからです。
逆に、会計上は黒字であっても、入金よりも出金が上回って、資金繰りがつかなくなれば会社は倒産します。2008年の米国の金融危機で次々に破たんした金融機関の多くも「黒字」であったと言われています。利益があるからといっても、必ずしもキャッシュがあるとは限りません。利益がキャッシュになるには時間差があるからです。その時間差を埋めるために、会社は黒字でも借金します。お金を銀行が貸してくれなくなると、会社の経営はとたんに苦しくなります。これは、一般の会社も金融機関も同じです。
著者プロフィール:金児昭(かねこ・あきら)
1936年、東京都生まれ。東京大学農学部農業経済学科卒業後、1961年、信越化学工業に入社。38年間、経理・財務の実務一筋。1992〜1999年、常務取締役(経理・財務、法務、資材担当)。現在、経済・金融・経営評論家。信越化学工業顧問。日本CFO(最高経理・財務責任者)協会最高顧問。30代で会計士試験に3度失敗。落ちっぱなしの公認会計士委員。
主な著書に『これでわかった!バランス・シート』『「経理・財務」これでわかった!』(以上、PHP研究所)、『お父さんの社交ダンス』(モダン出版)、『私がほしかったダンス用語集』(中経出版)など多数。本書は106冊目。
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