【北京・犬飼直幸】麻生太郎首相は29日、中国を公式訪問し、北京の人民大会堂で温家宝首相と約2時間20分間会談した。北朝鮮が再び核実験と弾道ミサイル発射に踏み切ると警告した問題については冷静に対応し、6カ国協議の再開へ向け協力することで一致。麻生首相は「北朝鮮に大きな影響力を持っている中国が役割を果たしてほしい」と一層の努力を促した。
また、温首相は麻生首相が靖国神社の春季例大祭に真榊(まさかき)を奉納したことを念頭に「靖国問題は国民感情にかかわるため適切に処理してほしい」と不快感を表明。麻生首相は「歴史を直視し、未来を志向する立場は何ら変更はない」と述べた。
新型インフルエンザについては世界的な感染拡大の防止へ情報交換などの連携を強化することを確認した。
2国間関係では経済、環境、国民交流の3本柱で「戦略的互恵関係」を発展させることで合意。主要経済閣僚による「日中ハイレベル経済対話」を6月7日に東京で再開▽団体旅行などに限られている中国から日本への観光ビザ(査証)を個人旅行でも解禁▽羽田空港と北京首都空港を結ぶチャーター便を10月に開設--することを決めた。
環境面では、中国の黄砂・酸性雨対策の技術協力などを盛り込んだ「日中環境・省エネルギー総合協力プラン」を新たにスタートさせることを決めた。
<北朝鮮問題>
麻生太郎首相 中国政府との緊密な協力で、国連安保理で良い内容の議長声明を出すことができた。北朝鮮は強く反発しているが、過剰に反応することなく、抑制的に対応することが重要だ。
温家宝首相 関係各国は大局的見地から冷静な態度を維持していくことが重要だ。6カ国協議は曲折があるが、粘り強く自信を持って困難を克服することが重要だ。
<新型インフル>
温首相 日中両国では感染したケースはないが、防止については大いに重視している。日中両国で協力して対処していきたい。
麻生首相 国民の冷静な対応が大切だ。速やかな情報開示、情報伝達、検疫強化に努力したい。中国とも情報交換、予防対策で協力していきたい。
<日中関係>
麻生首相 日中両国は大局観を持ち、戦略的互恵関係を育てていくべきだ。
温首相 関係発展のために政治的な相互信頼が大切。両国は努力しないといけない。
<歴史問題>
温首相 歴史問題は非常に敏感であり、特に靖国問題は国民感情にかかわるため、適切に処理してほしい。
麻生首相 歴史を直視し、未来を志向する立場は何ら変更はない。
<食の安全>
麻生首相 ギョーザ事件の早期の真相究明を強く望む。
温首相 今後も日中当局間の協力を強化し、一日も早く決着をはかりたい。
<東シナ海ガス田>
麻生首相 早く実務交渉を開始することが大切だ。指導力を発揮して対応してほしい。
温首相 事務レベルで引き続き意思疎通を図っていきたい。
<核軍縮>
麻生首相 オバマ政権が誕生し従来の米政権とは異なる対応をしている。核兵器を削減していくために中国も協力してほしい。
温首相 中国は核軍縮を積極的に支持している。【中国総局】
毎日新聞 2009年4月29日 23時51分(最終更新 4月30日 1時46分)