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「韓国の若者失業、かつての日本と同じ」

 雨宮処凛は作家で歌手、そして若者の失業問題を世に問い掛ける社会運動家でもある。トラックに大型スピーカーを積み込み、大音量で音楽を流しながら踊り、道行く人々の注目を集める「サウンドデモ」をする傍ら本を書く。

 高校を卒業してから5年間はフリーターとして、あらゆる職業を転々とした。そして右翼系ロックバンドのボーカルとして活動後は左派系のドキュメンタリー映画にも出演し、思想転向するという劇的な人生を走り抜けてきた。2007年に執筆した『生きさせろ! 難民化する若者たち』は日本ジャーナリスト会議賞を受賞した。

 黒いブラウスに黒いレースのスカート、黒いブーツ、黒い帽子と全身真っ黒な身なりで、「往年のロックボーカリスト」的な雰囲気を漂わせる彼女がソウルにやって来た。5月1日にソウル市内の弘益大前で行われる「働きたくても働けない人々のメーデー」に参加するためだ。

 「韓国の若者が抱える失業問題は、決して韓国だけの問題ではありません。日本も10年前のバブル崩壊で“就職氷河期”を経験しました。グローバルな経済体制の中で、人々はますます“代替可能”な使い捨て人材の扱いを受けるようになっています。人間らしく働き、生きられる環境を作ろうという問題意識を広めることが、今回のイベントの趣旨です」

 長い金髪を振り乱し、パンク・スタイルを貫く社会運動家は、韓国社会ではまだまだなじみのない存在だ。

 「こういうスタイルになったのは2000年代になってからです。これがわたしを表現する方法です」

 フリーター暮らしで、いつクビを切られるか分からず不安だったとき、雨宮処凛は極右団体の「突撃隊」に入った。

 「自己責任を唱える彼らの言葉には一理あると思ったんです」

 だが、1999年にドキュメンタリー映画『新しい神様』で主演を演じた後は、社会運動家へと変身した。

 「昨年韓国に来て、若者の失業や臨時職への就職難、弘益大前の“インディーズ文化”に触れたのですが、日本が過去に経験した問題とあまりにもそっくりなので驚きました。デジャビュ(既視感)を感じたほどです」

 雨宮処凛は「若者たちはインディーズ・バンドを作り、自由に振る舞い、“自分が好きでやっている”と言うけれども、それは自分の現実を隠す言葉」と言う。そして、「日本にもそうした“フリーターでも生きていける”という虚偽意識がありましたが、現実はそうではありませんでした。少なくとも子供を産み育てられるくらいの給料は受け取らなければ」と強調する。

 「仕事で達成感を得て、成長していけなければ、自暴自棄になります。戦争でも起きれば(兵士として)働き口ができるんじゃないかという人が現れるほど、日本の社会における若者の失業は根本的な問題を提起しています」

 だからこそ、社会的な雇用創出も重要ということだ。雨宮処凛は昨年、韓国の若者たちが陥っている就職難や不安などを取材し、『怒りのソウル-日本以上の「格差社会」を生きる韓国』という本を出版した。

パク・ソニ女性専門記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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