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【社会】

番組改変 『制作と国会対策分離を』 BPO NHKに意見書

2009年4月29日 朝刊

 従軍慰安婦を扱ったNHK教育テレビの番組改変問題で、NHKと民放でつくる第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は二十八日、改変は「公共放送にとってもっとも重要な自主・自律を危うくし、視聴者に重大な疑念を抱かせる行為」とする意見書を公表した。 

 意見書は、番組が改変された経緯をたどって(1)放送・制作部門の責任者が政治家に直接、番組趣旨の説明に出向いた(2)政治家と接触する機会の多い国会担当責任者が改変に直接関与して指図した−と具体的な問題点を挙げ、NHKの幹部管理職がこれらの行為に躊躇(ちゅうちょ)した形跡がないことに「強い違和感を抱く」と指摘。

 予算について国会の承認を得ねばならない放送法の規定からNHKが国会対策部門を設けることに理解を示しながらも、「みずから政治的介入を招いたり、そのすきをつくるようなもの」と厳しく批判し、「放送・制作部門と国会対策部門は、明確な任務分担と組織的な分離がなされるべきだ」などと求めた。今後の対応については「NHKの放送事業を支えている視聴者にていねいに明らかにするよう、希望する」と注文した。

 検証委の意見に法的拘束力はない。

 <NHK番組改変問題> NHK教育テレビは2001年1月30日、シリーズ「戦争をどう裁くか」で、従軍慰安婦問題をめぐる「女性国際戦犯法廷」を取り上げた「問われる戦時性暴力」を放送したが、取材に協力した市民団体が同年7月、内容が当初の説明と大きく異なり、番組は改変されたとしてNHKなどに損害賠償を求めて提訴した。一方、朝日新聞が05年1月「政治的圧力で改変」と報道。政治家とNHKは否定し、同新聞が設けた「NHK報道委員会」は同年9月、取材が一部不十分との見解を示した。訴訟は一審が制作会社1社に賠償命令。二審は「政治家の意図を忖度(そんたく)し、改変した」としてNHKにも賠償を命じた。しかし、08年6月の最高裁判決は取材対象者の「期待権」を認めず、原告の逆転敗訴が確定した。

 

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