Special Interview 坂本龍一

ラップトップを使ってのセッション。

─3月28日より、iTunes Storeでも配信中のfennesz + sakamoto名義の『cendre』に関してお伺いしたいのですが、クリスチャン・フェネスとのコラボレーションはどのようにして実現したのでしょうか。

イラク戦争が始まった2003年に、自分のウェブサイトで『CHAIN-MUSIC』という小さなプロジェクトを始めたんです。それはチェーンレターのように、たくさんのアーティストが音楽を繋げていくというプロジェクトです。イラク戦争に関しては今でこそアメリカでも問題になっていますが、結局必要のない戦争だった。でもそんなことは当時からわかっていたことで、それを理不尽だと感じていたアーティストが、その意志表示をするためにこの『CHAIN-MUSIC』に参加してくれたんです。人と人とが手を繋ぐように、それを音楽で繋いでいくということですね。このプロジェクトは今も続いていて、現在は22人ものアーティストが参加している。曲自体も1時間近くの長大なものになっています。このプロジェクトにクリスチャン・フェネスにも参加してもらいたくて、デヴィッド・シルヴィアンを通じて連絡をしたところ、快く引き受けてくれたのがきっかけです。その後、彼がニューヨークに来る機会があって、僕の自宅に立ち寄ったんです。お互いに挨拶をするとき、普通なら名刺交換をしますけど、うちではラップトップを使って即興をやるのが流儀になっていまして。

─ラップトップにはそんな使い方もあるんですね。それは驚きです。

そのときも一時間半ぐらい、ラップトップでフェネスとセッションをしたんですけど、その長い、長い名刺交換でお互いに良い感触を持って、一緒にやれることがあるんじゃないかなと思って、このfennesz + sakamotoがスタートしたんです。 実際の制作は、最初にフェネスが背景のようなエレクトリックな音源を送ってきて、その上に僕がピアノで即興をするという形でした。だいたいテイクワンで完成してしまうのですが、そんな音楽のやり取りを続け、三年間で徐々に曲が貯まっていったという感じです。
タイトルに関してはシンプルな言葉を付けようということで、お互いに好きな言葉をメールで送り合って、その中から良いと思うものを選んでいきました。日本語の響きにはかわいいものがあるし、日本語の『AWARE(憐れ)』は英語だと『AWARE(気付く)』になったりしておもしろい。それに一曲目の『OTO』なんて、対称的で顔のように見えて面白い。そんな感覚で決めていきました。

自分にないものを持っているから魅力的だと思うし、インスパイアされる。

─ソロでのご活動とは違って、コラボレーションという方法は坂本さんにとって得るものも大きいのでしょうか。

コラボレーションというのは、どんなジャンルにおいても自分ができないことをできる人とやらなければ意味がないですよね。その人が自分にないものを持っているから魅力的だと思うし、インスパイアもされる。だから僕は音楽に限らず、映画でもアートでも単純にすごいな、かっこいいなと思える人と一緒に仕事がしたいと思っているんです。常に貪欲で、吸収したいという気持ちがあるんでしょうね。飽きっぽい性格なのでその対象は常に変わっていくんですけど、最近は造園学なんかにも興味があります。庭師は音を出してくれないから難しいかもしれないけど、庭師とコラボっていうのもおもしろいかもね(笑)。

─今後、ライブ活動も積極的にされていくようですが、やはり気になってしまうのは、細野晴臣さん、高橋幸宏さん、坂本龍一さんのユニット、Human Audio Sponge (HAS)についてです。

Human Audio Sponge としては、5月19日に『スマイル・トゥギャザー・プロジェクト』のスペシャルライブをやります。それから我々が始めたレーベルのcommmonsから、4月25日に『細野晴臣トリビュートアルバム - Tribute to Haruomi Hosono -』を発売しますし、なにかとHuman Audio Spongeとcommmonsの活動が重なりますね。

─三人でのご活動という意味では、 久しぶりにYMO名義での『RYDEEN 79/07』がリリースされ、iTunes Store でもヒットをし続けていますね。

実は昨日も三人で会っていて、5月のHASのコンサートの準備をしていたんですけど…まあ、僕たちも歳を重ねてきていて気持ちが緩くなってきて、自分たちでも境界線がわからなくなっちゃってきていますから、「HASと書いて、YMOと読んでくれ」と。

─それはすごい!

そう読みたい人は読んじゃっていいよって。今はもうそんな感じですね。

─本日はどうもありがとうございました。

(2007.3.19 表参道・エイベックスグループにて)

Profile

坂本龍一

1952年東京生まれ。東京芸術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、細野晴臣、高橋幸宏と『YMO』を結成。散解後も、音楽・映画・出版・広告などメディアを越え活動。1984年、自ら出演し音楽を担当した『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞他を、映画『ラストエンペラー』の音楽でアカデミー賞、グラミー賞他受賞。以後、活動の中心は欧米へ。1999年制作のオペラ『LIFE』以降、環境・平和問題に言及することも多く、アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした論考集『非戦』を監修。自然エネルギー利用促進を提唱するアーティストの団体artists'powerを創始するなど、活動は多岐にわたっている。1990年より米国、ニューヨーク州在住。

坂本龍一公式サイト

iTunes Store

fennesz + sakamoto

cendre

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イエロー・マジック・オーケストラ

RYDEEN 79/07

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